古物商許可を受けられない8つの理由 - 欠格事由
はじめに
古物商の許可を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。中でも、法令に定められた「欠格事由」に該当する場合は、問答無用で、古物商の許可を受けられません。
古物商の欠格事由は、具体的には、古物営業法第4条と古物営業法施行規則第1条に規定されています。しかし条文の記載は分かりにくく、他の法律を参照しなければならなかったり、実際にどのような場合が該当するのかわからないといった方も多いのではないでしょうか
今回は、そんな古物商許可の適否を左右する欠格事由について、なるべくわかりやすく行政書士が解説します。
目次
1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない方
裁判所に対して自己破産の申立てを行い、破産手続が開始されると、申立人は法律上「破産者」となります。破産者は、一部の資格や職業が制限されるため、古物商の許可を受けることができません。
しかし、復権することで、破産者ではなくなり、破産手続中に制限されていた資格や職業に従事できるようになります。
復権事由
次のいずれかに該当する場合は復権となります。
- 免責許可の決定が確定したとき
- 債権者全員の同意により、破産手続廃止の決定が確定したとき
- 再生計画認可の決定が確定したとき
- 破産手続き開始決定後、詐欺破産罪の有罪判決を受けず10年経過したとき
- 全額弁済後、裁判所に復権を申立てたとき
復権しているか確認する方法
上記①から④による復権を「当然復権」といい、特に手続きをしなくても自動的に復権が認められます。したがって、復権したからといって、何か通知が届くというわけではありません。
その場合、自分が復権しているか確認するには、本籍地の市区町村が発行する身分証明書を取得するとよいでしょう。身分証明書に、以下のような記載があれば、既に復権しているということになります。
破産宣告又は破産手続開始決定の通知を受けていない。
なお、この身分証明書は、古物商の許可申請において添付書類として警察署へ提出する必要があります。警察においても、この身分証明書による書面審査で、破産手続開始決定の有無を判断することになります。
2019年の古物営業法の改正により、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう成年被後見人・被保佐人は、欠格事由から除外されることとなりました。
2. 刑罰を受けたことのある方
過去に、一定の刑罰を受けたことがある方は、その刑の執行を終わり、または、執行を受けることのなくなった日から5年間は、古物商の許可を受けることができません。
禁固以上の刑を受けた場合
現在、日本の刑罰は、刑の重い順に「死刑>懲役>禁錮>拘留>罰金>科料」の6種類です。したがって、禁固以上の刑とは、(「死刑」)「懲役」「禁固」となります。
罪種を問いませんので、(「死刑」)「懲役」「禁固」に処された場合、その刑の執行が終わった日から5年間は、古物商の許可を受けることができません。
仮釈放の場合
仮釈放により出所し、その仮釈放を取り消されることなく、残りの刑期を満了した場合、その残刑期が満了した日から5年間は、古物商の許可を受けることができません。
執行猶予の場合
執行猶予期間中は、古物商の許可を取得することはできません。しかし、その執行猶予を取り消されることなく期間を満了した場合は、その期間満了の翌日から古物商の許可を受けることができます。大赦や恩赦を受けた場合も、その翌日から欠格事由から外れることになります。
「執行を受けることのなくなった日から5年間」だから、執行猶予期間が満了してから5年間は許可を受けられないのではないかと思われるかもしれませんが、刑法第27条により、執行猶予期間満了の日から将来に向かって法律上の効果が消滅するため、許可を受けることができます。
一定の犯罪について罰金刑を受けた場合
一定の犯罪とは、古物営業法第31条に規定される罪と刑法の窃盗や盗品に関する罪をいいます。具体的には、以下の罪に問われ、罰金刑に処された場合は、罰金を納付した日から5年間は、古物商の許可を受けることができません
古物営業法第31条
- 無許可営業
- 不正手段により許可を受ける行為
- 名義貸し
- 営業停止等命令違反
刑法
- 第235条「窃盗」
- 第247条「背任」
- 第254条「遺失物等横領」
- 第256条第3項「盗品等運搬、保管、有償譲受け又は有償処分のあっせん」
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3. 暴力団員又はその関係者
暴力団関係者等による犯罪行為に関連するおそれがある場合
暴力団員は当然ですが、暴力団員であった方や暴力団関係者等による犯罪行為に関連するおそれがある方は、古物商の許可を受けることができません。
暴力団等に関する欠格事由
- 暴力団員
- 暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団以外の犯罪的組織の構成員で、当該組織のほかの構成員の検挙状況(犯罪率、反復性等)からみた当該組織の性格により、強いぐ犯性が認められる者
- 過去10年間に暴力的不法行為等を行ったことがあり、その動機、背景、手段、日常の素行等から見て強いぐ犯性が認められる者
暴力的不法行為等には、刑法犯罪(殺人、暴行、強姦等)や、金融商品取引法違反、大麻・麻薬・覚醒剤取締法違反、児童ポルノ禁止法違反など、多種多様な法令違反が含まれます。
なお、「暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」に該当するかについては、暴力団対策主管課に照会をし、ぐ犯性については、必要に応じて、以下により総合的に判断されます。
- 前科照会の結果
- 部内資料
- 家族又は知人に対する聞き込みによる日常の素行の調査 等
ぐ犯性(虞犯性)とは、将来の犯罪や触法行為を行う可能性、犯罪的危険性という評価概念です。
暴対法違反により命令又は指示を受けた場合
暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)における以下の規定に違反し、都道府県公安委員会等から命令又は指示を受けた方は、その命令又は指示を受けた日から3年間は、古物商の許可を受けることができません。
- 暴力的要求行為の要求等の禁止
- 何人も(一般人を含む)、指定暴力団員に対し、暴力的要求行為を行うよう要求等することは禁止されています。
- 準暴力的要求行為の禁止
- 指定暴力団員以外の者(準構成員、周辺者等)が、指定暴力団の威力を示して、暴力的要求行為を行うことは禁止されています。
- 準暴力的要求行為の要求等の禁止
- 指定暴力団員が、人(一般人を含む)に対し、準暴力的行為を行うよう要求等することは禁止されています。
暴力的要求行為とは、具体的には「みかじめ料の要求」「用心棒代等の要求」「因縁をつけて金品等の要求」など27類型の不当な行為が規定されています。詳しくはこちら「全国暴力追放運動推進センター」
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4. 住居の定まらない方
古物営業法では、常時住居を有しない者は、古物商の許可を受けることができません。この規定は、古物商が事業を適切に行うために一定の責任と安定性が求められることを意味しています。
具体的には、住所不定、ホームレス状態にある者などが該当します。これらの者は、警察による立入調査や指導監督を受けることが困難であり、不正が起きた際の責任追及も難しくなるためです。
また、住居の定まらない状態は、生活の基盤が不安定であることを示しています。古物商は、取引相手の本人確認や適切な帳簿の記録など、その営業には一定の体制が求められます。そのような体制を整備することが困難な状況にあれば、許可要件を満たせないと判断されます。
本籍の記載のある住民票は、許可申請の添付書類として、提出が必要になります。
5. 古物商許可を取り消されたことのある方
古物営業法や他の法令(上記、刑法や暴対法など)の規定に違反し、古物商許可を取り消された場合は、その取消しの日から5年間は、新たに許可を受けることができません。
法人に与えられた古物商許可が取り消された場合
なお、法人の古物商許可が取り消された場合、以下の者も5年間は新たに許可を受けることができません。
・取消しについて聴聞が行われる日60日前までに、その法人の役員だった者
具体的には、こういう状況を指します。
ある法人の古物商許可が取り消されたとします。その取消しに関する聴聞の期日と場所が公示された日から遡って60日以内に、その法人の役員だった人がいたとします。
この役員だった人は、その法人の許可取消し日から5年間は、新しく古物商の許可を受けられません。また、この役員が在籍する法人も同様です。
取り消し処分の責任を問われる対象が、「取り消された当時の役員個人」とその「役員の在籍する法人」の双方に及ぶということです。
6. 心身の故障により適正に業務を実施することができない方
精神機能の障害により、古物商としての業務を適切に行うことができない者は、許可を受けられない欠格事由とされています。
ここでいう「精神機能の障害」とは、認知機能の低下や判断力の欠如、意思疎通の困難などにより、古物商に求められる適正な業務遂行が困難な状態を指します。
具体的には、認知症や知的障害、精神障害などが考えられますが、認知症と診断されたからといって一律に不許可とするのではなく、各人の状態によって個別的、実質的に審査されます。
前述の成年被後見人が欠格事由から除外されたように、一人一人の実態に応じて許可適否が判断されるということです。
7. 未成年者
原則、18歳未満の未成年者は、古物商の許可を受けることができません。ただし、例外的に、以下の場合は、未成年者であっても古物商許可を受けることができます。
- 未成年者が古物商の相続人で、その法定代理人が上記欠格事由のいずれにも該当しない場合
- その法定代理人により営業を許可された場合(民法第6条)
なお、未成年者がその法定代理人から許可を受けて営業を行う場合、未成年者が自己の名をもって商売をする旨の「未成年者登記」を行う必要があります(商法第5条)。
成人年齢の引き下げと結婚適齢の男女統一(18歳)により、未成年者が結婚した場合の成年擬制(成人とみなす:民法第753条)は、廃止されました。
8. 管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある
古物商の管理者は、営業所に係る業務を適正に実施するための責任者で、営業所ごとに必ず一人選任しなければなりません。「相当な理由がある」とは、具体的には以下の場合を指し、そのような場合には古物商の許可を受けることができません。
- 管理者として選任しようとする者を具体的に決定していない場合
- 管理者として選任しようとする者がその営業所に勤務している者でない場合
- 管理者として選任しようとする者がその営業所において責任ある職に就いている者でなく、管理者の職務を適切に遂行することが到底期待できない場合 等
法人の役員の欠格事由
許可申請者が法人の場合、その役員ついて、欠格事由が定められています。法人の役員が、上記1~6のいずれかに該当する場合は、古物商の許可を受けることができません。
これは、役員全員について問われることなので、役員の中に欠格事由に該当する者がいる場合、古物商許可を受けるためには、その役員を退任させる必要があります。
管理者の欠格事由
管理者が、上記1~7のいずれかに該当する場合は、古物商の許可を受けることができません。
古物商(個人申請者)や法人の役員が管理者を兼務することは、古物商の許可申請において一般的なケースです。これらの欠格事由は、古物商や法人の役員と管理者で重複するものが多く、問題が生じる可能性は低いと考えられます。
ただし、未成年者は法定代理人の同意があれば古物商や法人の役員になることができますが、管理者については例外はなく、未成年者は一律に欠格事由に該当します。
古物商 | 法人の役員 | 管理者 | |
---|---|---|---|
未成年者 | △ | △ | ✕ |
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Q&A
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古物商の許可を取り消される前に、許可証を自主返納した場合はどうなりますか?
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古物商の許可が取り消される際には、まず「聴聞(ちょうもん)」と呼ばれる意見陳述の機会が与えられます。聴聞の結果、対象者の意見に「理由がない」と判断されれば、許可の取消しが決定されます。
古物営業法では、この聴聞の公示日から許可取消しまでの間に許可証を返納した場合についても規定があり、許可証を返納した日から5年間は古物商の許可を受けることができなくなります。また、聴聞で許可取消しの決定が下されなかった場合でも、返納日から5年間はこの欠格事由に該当することになります。
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すでに古物商許可を取得している法人の役員に就任することになりました。この場合も、欠格事由について審査されますか?
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はい。古物商許可を取得している法人の役員に就任する場合、役員就任の変更届を提出することになります。その際に、添付書類として「本籍地の市区町村が発行する身分証明書(破産者ではないことを証明する書面)」や「略歴書(直近5年間の職歴等)」「誓約書(欠格事由に該当しないことを誓約する書面)」も提出する必要があり、新規で許可申請をする場合と同様に、欠格事由について審査されます。