古物商とは?古物商許可が必要な7つの取引パターン

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はじめに

「中古品の売買には古物商の許可が要る」

小耳に挟んだこともある人もいれば、まったくの初耳だという人も意外と多いかもしれません。

中古品の取引については「古物営業法」に規定されていますが、もちろん、法は「なにがなんでも許可が必要」といっているわけではありません。

法の規定する「古物」「古物商」の定義から見えてくる「許可が必要なケース」を、行政書士がわかりやすく解説します。

古物とは

古物(こぶつ)とは、一般的には中古品や骨とう品のことをいいますが、古物営業法においては、以下のように明確に定義されています。(古物営業法第2条第1項)

一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。」

古物商法第2条第1項

POINT - 古物の3つの定義

  • 一度使用された物品
  • 使用されない物品で「使用のために取引されたもの」
  • これらいずれかの物品に幾分の手入れをしたもの

「使用のために取引されたもの」とは

「使用のために取引されたもの」とは、自己が使用し、又は他人に使用させる目的で購入等されたものをいいます。したがって、小売店等から一度でも一般消費者の手に渡った物品は、それが未使用であっても、「古物」に該当することになります。

古物とは?3つの定義と13のカテゴリー

古物商許可に係る「古物」は、一般に言う「中古品」とは異なります。法律上の古物の3つの定義と13の区分を解説します。

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古物商とは

古物商とは、古物営業法第2条第2項第1号が規定する営業「1号営業」を「許可を受けて行う者」(古物営業法第2条第3項)を指します。

古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの

古物営業法第2条第2項第1号

POINT - 1号営業の定義

  • 古物を売買または交換をする営業(委託を受けて行う場合も含む)
    • 古物を売却することのみを行うものはあたらない
    • 「自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けること」のみを行うものはあたらない

「自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けること」とは

「自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けること」とは、あくまで自分が売却した物品を、その売却した相手方から直接買い戻すことに限られます。例えば、自分が売った相手が、さらに第三者に転売したものを、その第三者から買い戻す場合、盗品等が混入するおそれがあるため、許可が必要になります

「自己」とは、法人格を一にすることをいう

例えば、東京都にA営業所、大阪府にB営業所を有する法人の場合、A営業所で売却した物品の相手方から、その売却した物品をB営業所で買い取ることが該当し、この場合、古物商許可は不要です。

古物営業法には、3つの営業形態が規定されています。

それぞれ、「1号営業」「2号営業(古物市場経営)」「3号営業(古物競りあっせん営業)」と呼ばれ、これらをあわせて「古物営業」といいます。(古物営業法第2条第2項)

POINT - 古物営業

  • 1号営業 ➡ 許可を受けて行う者「古物商」
  • 2号営業(古物市場経営) ➡ 許可を受けて行う者「古物市場主」
  • 3号営業(古物競りあっせん業) ➡ 許可を受けて行う者「古物競りあっせん業者」
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古物市場の経営とは

古物市場とは、古物商の間で、売買又は交換をするための場所のことをいいます。

いわば、プロによるプロのための市場です。

古物商とは別の営業形態なので、古物市場を経営する場合には、別途、公安委員会への許可申請が必要となります。

また、古物市場に参加して取引を行うには、古物商許可のほか、「行商する」として申請している必要があります。

行商とは?古物商許可は「行商する」で申請すべき理由

行商とは「古物商が自らの営業所以外の場所で行う古物の取引」をいいます。従って「行商しない」として申請した場合、取引場所は「自らの営業所」に限られます。

古物競りあっせん業とは

古物競りあっせん業とは、いわゆる「ヤフオク」のようなインターネット・オークションを運営し、利用者から何らかの対価を徴収する営業のことをいいます。

「自らは古物の売買を行わず、場を提供するだけ」という点で、「古物商がホームページ等を開設し、それを利用して古物の売買を行う(URL届出)」とは異なります。

インターネット・オークションを運営するためには、営業開始の日から2週間以内に、本拠となる事務所の所在地を管轄する公安委員会(警察署)に、所定の事項を記載した「届出書」を提出しなければなりません。(古物営業法第10条の2)

申請と届出の違い

「申請」は、許可基準に適合しているか審査が行われ、「許可」「不許可」といった諾否の応答がなされるのに対し、「届出」は、記載事項に不備がなく、必要な書類が揃っている(形式上の要件を満たしている)のであれば、基本的に受理されることになります。(行政手続法第2条第7号)

古物商許可が必要なケース

ポラロイドカメラを持つ女性

さて、基本的な用語が整理できたところで、古物商の許可が必要となるケースを見ていきましょう。

古物営業法に定められる「古物」「古物営業」の定義から読み解いていくと、古物商許可が必要となる取引は7つのパターンに分けることができます。

古物商許可が必要となる7つの取引パターン

  1. 古物を買い取って売る
  2. 古物を買い取って修理して売る
  3. 古物を買い取って部分的に売る
  4. 古物を買い取らず、売った後に手数料をもらう(委託売買)
  5. 古物を別のものと交換する
  6. 古物を買い取ってレンタルする
  7. 国内で買い取った古物を国外で売る
行政書士に申請代行を依頼する3つのメリットと費用の相場 - 古物商

古物商の許可申請を行政書士に依頼した場合の3つのメリットを具体的事案から考察し、その費用の相場について行政書士が解説します。

1. 古物を買い取って売る

ポイントは「買う」と「売る」の2つの行為がなされていることです。

ですから、無償又は引取料を徴収して引き取った中古品を販売する場合や、買い取った中古品を自分で使用する又は他の人に無償で譲る場合などは、法の規制の対象から除外されるため、古物商許可は不要です。

古物営業法の目的は「盗品等の流通防止や早期発見」であり、窃盗犯が盗品を何ら利益もなく、無償で処分する可能性は低いため、許可は不要としています

2. 古物を買い取って修理して売る

修理(条文上は「幾分の手入れ」といいます)とは、物品の本来の性質、用途に変化を及ぼさない形で修理等を行うことをいいます。

例えば、絵画については表面を補修すること、刀については研ぎ直すことです。

もう少し身近な例でいえば、電気製品店が、買い取った中古冷蔵庫をクリーニングして販売する場合などがあたります。

3. 古物を買い取って部分的に売る

ジャンクPCや中古車を買い取り、使用可能な部品を抜き取り(いわゆる「部品取り」)、それを販売する場合です。

繰り返しになりますが、自分のために部品取りをし、それを売らずに保管・使用するのであれば、古物商の許可は不要です。

使用済自動車から再利用部品などの取り外しを行うためには、個人で行う場合においても都道府県知事等から「解体業の許可」が必要です(使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)

4. 古物を買い取らず、売った後に手数料をもらう

これは、古物を販売するよう依頼を受けて、売れた場合に手数料をもらう、いわゆる委託売買のケースです。

今までのパターンからみると、古物商の「買い取り」は行われていませんので、許可は不要なようにも思えます。

しかし、古物営業法の目的から鑑みると、もし、窃盗犯から盗品の販売委託を受けそれが売れた場合、窃盗犯に利益が渡ってしまうため、その防止の観点から法の規制が及ぶこととなっています。

「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業」(古物営業法第2条第2項第1号)

5. 古物を別のものと交換する

少し変わった例を紹介すると、エアコンを下取りして、査定価格に応じた「クーポン券」の発行や買い物で使える「ポイント」を付与する場合です。

しかし、この例のように、下取りした古物の対価として金銭等を支払うのではなく、販売する新品の本来の売価から一定金額が差し引かれる場合は、古物営業には該当しません。

「どんなに古いエアコンでも下取りで新品のエアコン購入代金から一律○○万円引き!」等という場合は、古物商許可は不要です

6. 古物を買い取ってレンタルする

中古自動車を買い取ってレンタカーに、中古自転車を買い取ってレンタサイクルシェアサイクルに使用する場合などです。

製造・販売メーカーから直に新品を購入してレンタルする場合は、もちろん許可は必要ありません

レンタカー事業を行うには、道路運送法に基づく「自家用自動車有償貸渡業の許可」を取得しなければなりません

7. 国内で買い取った古物を国外で売る

日本国内で中古品を買い取って海外で販売する(輸出する)場合、古物商許可が必要です。

それとは反対に、海外で中古品を買い取って日本国内で販売する(輸入する)場合はどうでしょうか。

この場合、古物商許可は不要となっています。

これは、古物営業法は、「日本国内に流通している古物に関する法律なので、海外で流通している古物については適用されないため」です。(警視庁に確認済み)

他の輸入業者が輸入した中古品を国内で買い取って販売する場合は、許可が必要になるので注意してください

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古物商許可が「不要」なケース

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今度は、古物商許可が不要になるケースを見ていきましょう。

古物商許可が不要になる取引は、6つのパターンに分けることができます

古物商許可が「不要」な6つの取引パターン

  • 自分のものを売る
  • 自分のものをオークションで出品する
  • 無償でもらったものを売る
  • 相手から手数料をとって回収したものを売る
  • 自分が売った相手から売ったものを買い戻す
  • 自分が海外で買ってきたものを(日本国内で)売る

ポイントは (「⑥:輸入」の場合を除いて)「古物を買う」行為が行われていないこと、つまり、「古物を売却することのみ」行われていることです。

古物営業の定義は、古物の「売り」「買い」です。

そのどちらか一方でも欠けた場合、その取引は法の規定する「古物営業」として成立せず、許可は不要ということになります。

罰則:無許可営業をしてしまったら

第三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
 第三条の規定に違反して許可を受けないで第二条第二項第一号又は第二号に掲げる営業を営んだ者
 偽りその他不正の手段により第三条の規定による許可を受けた者
(後略)

古物営業法

もし、古物商の許可を受けずに、古物営業法の規制の及ぶ古物の売買を行ってしまった場合、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。

また、偽りその他不正の手段により古物商の許可を受けた場合も同様です。

Q&A

古物商の許可証には有効期限がありますか?

古物商の許可には有効期限はありません。当然、更新手続もありませんので、一度取得すれば一生効力を有します。なお、許可を受けてから6か月以内に営業を開始せず、又は、引き続き6か月以上営業を休止し現在も営業していない場合は、許可を取り消されてしまう可能性がありますのでご注意ください。(古物営業法第6条第1項第3号)

インターネットでしか取引しない場合でも古物商の許可は必要ですか?

「法律上の古物」にあたるものを「古物商の営業」にあたる方法で取引を行う場合は、オンライン・非オンラインを問わず、古物商の許可が必要となります。なお、ホームページを利用して古物の取引を行う場合は、そのURLを「URLを使用する権限を疎明する資料」とともに届け出なければなりません。

古物商には誰でもなれますか?

以下のいずれかに該当する方は、古物商の許可を受けることができません。

  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • (罪種を問わず)禁固刑や懲役刑に処せられ、又は無許可古物営業や名義貸しのほか窃盗、背任、遺失物横領、盗品譲受け等で罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けなくなってから5年を経過しない者
  • 暴力団員
  • 暴力団員でなくなってから5年を経過しない者
  • 暴力団以外の犯罪組織の構成員で、強い「ぐ犯性」が認められる者
  • 暴力団対策法第12条、第12条の4第2項及び第12条の6の命令又は指示を受けたものであって、受けてから3年を経過しない者
  • 住居の定まらない者
  • 古物営業法第24条の規定により古物営業の許可を取り消された者
  • 心身の故障により管理者の業務を適正に実施することができない者として国家公安委員会規則で定める者
  • 一定の未成年者
  • 営業所ごとに管理者を専心しないと考えられる者
  • 法人で、役員に①から⑨までのいずれかに該当する者があるもの
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「管理者」がいなくても古物商の許可を受けられますか?

管理者は、その営業所ごとに必ず1人は選任しなければならないため、「管理者なし」で申請したとしても、その申請は受理されないでしょう。なお、古物商が自ら営業所における業務の実施を実質的に統括管理することができる場合は、古物商が自らを管理者として選任することもできます。

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