古物商許可が取消しとなる6つの事由と2つの救済手段

はじめに

古物商として営業するには、都道府県公安委員会から許可を受ける必要があります。しかし、この許可は一度取得したからといって安心できるものではありません

古物商について規定している古物営業法に違反すれば、許可が取り消される可能性があることをご存知でしょうか?今回は、古物商の許可取消について、その原因や救済の手段を行政書士が解説します。

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許可取消の対象となる違反行為

許可の取消しとなる違反行為は、主に次の3つとされています。そして、指示や営業停止命令(分類「B~F」)との関係でいえば、それらは「A」に分類される行為に該当します。

  1. 不正手段により許可を受ける行為
  2. 名義貸し
  3. 営業停止等命令違反

1. 不正手段により許可を受ける行為

古物営業法(以下、「法」という)第6条第1項第1号)

これは、欠格事由(許可を取得できない理由)に該当する者が、虚偽の申請や偽装などで不正に許可を取得した場合です。例えば、破産者や暴力団員などが略歴書や管理者名義を偽って申請した場合などです。

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2. 名義貸し

(法第9条)

名義貸しとは、古物商許可を取得している人が、許可を持っていない人に許可を貸して古物営業をさせることです。

  • 個人で取得した古物商許可を法人に貸す
  • 法人で取得した古物商許可を個人に貸す
  • 法人で取得した古物商許可を別の法人に貸す
  • 友人や知人から古物商許可を借りる
  • ブローカーから報酬と引き換えに古物商許可を借りる など
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3. 営業停止等命令違反

(法第24条)

営業停止等命令違反とは、既に行った違反行為に対して「営業停止命令」が出されたにもかかわらず、その命令に従わないことを指します。

これら1~3の違反行為を行った場合、許可の取消しに加え、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。(法第31条)

許可取消となるとき - 処分基準

許可の取消しは、古物商のみならず管理者や従業員等が上記1~3の違反行為を行ったときのほか、次のような場合についても行うものとされています。

  • 古物商が上記の違反行為を行ったとき
  • 古物商が指導及び監督その他必要な措置を尽くしていなかったことにより、管理者又は従業員等が上記の違反行為を行ったとき
  • 営業停止命令の長期が6か月に達した場合であって、かつ、次に掲げる事由があるとき
    • 営業停止命令対象行為の態様が極めて悪質であること
    • 法令又は「指示」に違反した程度が著しく大きいこと
    • 盗品等の売買等の防止又は盗品等の速やかな発見が営業停止命令対象行為によって阻害される程度が著しく高いと認められること
    • 古物商が営業停止命令対象行為を行った日から5年以内に同種又は類似の営業停止命令対象行為を理由として、指示又は営業停止命令を受けたこと
    • 管理者や従業員等が営業停止命令対象行為を行うことを防止できなかったことにつき、古物商の過失が極めて重大であると認められること
    • 古物商が営業停止命令対象行為に関する証拠を隠滅し、偽造し、又は変造しようとするなど情状が特に重いこと
  • 古物商、管理者又は従業員等が許可の取消しを行おうとする日の前の1年間に60日以上の営業停止命令を受けたことがあり、かつ、その営業停止命令の理由となった法令違反行為に係る法令の規定と同一の法令の規定に違反したとき
  • 法令違反行為等を行った古物商、管理者又は従業員等が再び法令違反行為等を繰り返すおそれが極めて強く、古物営業の健全化が期待できないと判断されるとき

法令違反行為等には、刑法における「窃盗(刑法第235条)」「強盗(刑法第236条)」「詐欺(刑法第246条)」「恐喝(第249条)」などが含まれます。

法令違反行為等に対して許可の取消しを行うときは、指示又は営業停止命令は行わないとされています。

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処分が軽減される場合

許可の取消しを行うべき場合であっても、情状により特に軽減すべき事由があるときは、許可の取消しに変えて営業停止命令を行うことができるとされています。

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許可取消の可能性がある事由

何か不正や違反行為を行った場合だけでなく、事情の変化や不作為(すべきことをしないこと)によっても許可が取り消される可能性があることを理解しておく必要があります。

  1. 許可後に欠格事由に該当するようになった場合
  2. 営業開始又は再開しなかった場合
  3. 所在不明となった場合

4. 許可後に欠格事由に該当するようになった場合

(法第6条第1項第2号)

許可を取得した時点では問題なかったが、その後何らかの理由で欠格事由に該当するようになった場合です。例えば、罪を犯して禁固以上の刑を受けた場合や破産手続開始の決定を受けた場合などです。

また、法人として申請した場合は役員(監査役も含む)全員が欠格事由から外れている必要がありますので、もし該当する役員がいれば退任させる必要があります

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5. 営業開始又は再開しなかった場合

(法第6条第1項第3号)

許可後6ヶ月以内に営業開始しなかった場合や過去営業していたが6ヶ月以上休止し再開の見込みが立っていない場合です。このような者は実質的に営業しない者とみなされます。

公安委員会としては常時監督・指導する必要性からも実態ある営業者だけを登録しておきたいと考えています。

6. 所在不明となった場合(簡易取消し)

(法第6条第2項)

公安委員会は、営業所又は古物商(法人である場合は、その役員)の所在を確知できない場合は、その事実を官報により公告し、その公告の日から30日を経過しても当該者から申し出がないときは、その許可を取り消すことができます。

例えば、古物商を廃業しているにもかかわらず許可証を返納していなかったり、営業所が移転したのにもかかわらず住所の変更届出を怠っていた場合などがこれにあたります。

簡易取消しは「聴聞(後述)」を経ずに行うことができ、許可を取り消した際には、取消処分を行った旨を官報で公告されます。

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反論の機会

許可の取消しは、行政手続法上の不利益処分にあたるため、実際に取消処分を行う前に、その処分の対象者に反論(防御)の機会を与えるため「聴聞(ちょうもん)」が行われます。(簡易取消しの場合を除く

聴聞手続において、処分の対象者には「意見陳述権」「証拠書類等の提出権」「行政庁職員への質問権(要「主宰者」の許可)」が認められています。

聴聞の結果、処分の対象者の主張に理由があると認めれらるときは、取り消し処分を免れることができます。

正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、意見陳述書等を提出しない場合は、改めて反論の機会を与えることなく聴聞は終結し、許可の取り消し処分となります。(行政手続法第23条)

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救済の手段

聴聞において、自己の正当性を訴えたにもかかわらず、その主張に「理由なし」として許可の取消しとなってしまったとしても、まだこれで終わりではありません。

事後救済として、行政機関に対して救済を求める「行政不服申立て」と、裁判所に対して救済を求める「行政事件訴訟」という2つの制度が残されています。

1. 審査請求

「審査請求」という言葉を初めて聞いた方が多いかと思いますが、審査請求とは、簡単に言うと、処分を行った行政庁を指揮監督する行政庁に「この処分はおかしいから見直して」と求める制度のことです。

審査請求を行うには、原則、「審査請求人の氏名・住所」「処分の内容」など、行政不服審査法第19条に規定された事項を記載した「審査請求書」を処分をした行政庁の最上級行政庁に提出する必要があります。

審査請求の審理は、この審査請求書が提出された行政庁に所属する職員の中から指名された「審理員」を中心に、「弁明書」や「反論書」などといった書面のやり取りによって行われます。

古物商の許可申請をしてから2か月以上経過したにもかかわらず、許可とも不許可とも連絡がないなど、行政庁の「不作為」に対しても審査請求を行うことができます。

2. 処分取消しの訴え

取消訴訟は、行政事件訴訟法に規定される訴訟類型の一つです。裁判となりますと、弁護士費用や審理に長い期間を要することになりますので、それなりの覚悟が必要です。

行政事件訴訟の平均審理期間は15.7月であり,民事第一審訴訟事件全体の平均審理期間(8.2月)と 比べて長い。 また,期日回数の増加に伴い審理期間が長くなる傾向にあり,期日間隔は民事第一審訴訟 事件全体の期日間隔より長くなっている。

行政事件訴訟の状況 - 裁判所

なお、審査請求との関係でいうと、古物営業法おいては、特別の規定(審査請求前置)がないため、「審査請求」または「取消訴訟」のどちらか好きな方を選択することもできますし、両方同時に行うこともできます。(行政事件訴訟法第8条:自由選択主義)

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