古物商の本人確認義務とは?対面取引における4つの確認方法

テーブルで向かい合う男女

はじめに

「本人確認って実際にはどうやるの?」

「100円で買い取る場合でも確認が必要なの?」

古物商は、古物の買取等を行うときは、その取引の相手方について、法に定められた方法により、法に定められた事項を確認しなければなりません。

これは、古物営業法の目的である「盗品等の市場への流入防止」のために課された義務で、古物商の防犯三大義務のひとつに数えられます。

この重要な本人確認義務について「どのような場合に」「どのような方法で」「何を確認しなければならないか」を行政書士が解説します。

貴金属等を取り扱う古物商必読!犯罪収益移転防止法における義務

貴金属等を取り扱う古物商は、古物営業法における義務に加え、特定の条件の下、犯罪収益移転防止法のおける義務が課せられます。

本人確認が必要な場合

古物営業法(以下、「法」という。)第15条第1項)

古物商は、次の取引を行う場合には、原則、相手方の本人確認をしなければならない義務が課せられています。

確認が必要な場合

  • 古物を買い受ける場合
  • 古物を交換(レンタル含む)する場合
  • 古物の売却又は交換の委託を受ける場合

本人確認義務の例外

(法第15条第2項)

上記の取引を行うときであっても、次の場合については、本人確認の義務が免除されています。

確認義務が免除される場合

  • 対価の総額が1万円未満の取引きをする場合(国家公安委員会規則で定める古物を取引する場合を除く)
  • 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い戻す場合

対価の総額が1万円未満でも免除されない古物

古物営業法施行規則(以下、「規則」という。)第16条第2項)

特に当該確認又は文書の交付の必要があるものとして国家公安委員会規則で定められている次の古物については、対価の総額が1万円未満の取引であったとしても確認措置を取らなければなりません

1万円未満でも本人確認が必要な古物

  • 自動二輪車及び原動付自転車
    • (これらの部分品(ねじ、ボルト、ナット、コードその他の汎用性の部分品を除く)を含む)
  • 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物
    • 例:ゲームソフトなど
  • 光学的方法により音又は影像を記録した物
    • 例:CD、DVD、BDなど
  • 書籍
ゲームソフトとは

ゲームソフトとは、プレイステーションなどの家庭用ゲーム機やPC等で使用されもので、CD、DVD、カセット、カートリッジ等の形式は問いません。

光学的方法により音又は影像を記録した物とは

「透明な円盤に挟まれた被膜に孔の形で信号を書き込むことで音又は影像を記録し、これにレーザー光線を照射し、その反射によって信号を読み出す物」のことをいい、「磁気記録媒体や半導体ディスクに音楽や映画等を記録した物」であるカセットテープ、ビデオテープ、フロッピーディスク、MD、フラッシュメモリなどは含まれません

【まとめ】本人確認義務がある古物 - 早見表

対価の総額が一万円以上の場合は「すべての古物」、一万円未満の場合は「バイク」「ゲームソフト」「CD、DVD、BDなど」「書籍」の買取等を行うときは、相手方の本人確認が義務付けられます。

なお、古物の売却時は、本人確認は不要です。

対価の総額買取等
一万円以上すべての古物
一万円未満・自動二輪車及び原動付自転車(部分品を含む*1)
・ゲームソフト
・CD、DVD、BDなど
・書籍
*1 「ねじ」「ボルト」「ナット」「コード」その他汎用性の部分品を除く
古物とは?3つの定義と13のカテゴリー

古物商許可に係る「古物」は、一般に言う「中古品」とは異なります。法律上の古物の3つの定義と13の区分を解説します。

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確認事項

古物営業法は「窃盗その他の犯罪の防止」とともに「その被害の迅速な回復」を目的としており、相手方の氏名など4つの事項の確認が必要です。

確認しなければならない4つのこと

  • 住所
  • 氏名
  • 職業
  • 年齢

相手方が18歳未満であった場合

本人確認をした結果、年齢が18歳未満であった場合、各都道府県の条例により古物の買受けや売却の委託について制限が設けられていますので注意が必要です。

(質受け及び古物買受けの制限)

第十五条 質屋(質屋営業法(昭和二十五年法律第百五十八号)第一条第二項に規定する質屋をいう。以下同じ。)は、青少年から物品(次条第一項に規定する物を除く。)を質に取つて金銭を貸し付けてはならない。

2 古物商(古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第二条第三項に規定する古物商をいう。以下同じ。)は、青少年から古物(次条第一項に規定する物を除く。)を買い受けてはならない

3 前二項の規定は、青少年が保護者の委託を受け、又は保護者の同行若しくは同意を得て、物品の質入れ又は古物の売却をするものと認められるときは、適用しない。

4 何人も、正当な理由がある場合を除き、青少年から質入れ又は古物の売却の委託を受けないように努めなければならない。

東京都青少年の健全な育成に関する条例

条例では、次のときを除き、青少年(18歳未満の者)から古物を買い受けてはならないとされています。

  • 保護者の委託を受けているとき
  • 保護者が同行しているとき
  • 保護者の同意を得ているとき

上記の引用は東京都のものですが、全国の自治体においても同じ内容の条例が定められています(参考:大阪府青少年健全育成条例 - 第23条関係 / 愛知県青少年保護育成条例 - 第18条関係)

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本人確認方法

確認方法は、古物商が自らの営業所等で相手方と対面して取引する場合と、インターネット等により相手方と対面しないで取引する場合とに分類されます。

確認方法

  • 対面取引の場合
    • ① 身分証明書等の提示を受ける方法
    • ② 相手方の家族等に問い合わせて確認する方法
    • ③ 確認事項を記載・署名させた文書の交付を受ける方法
    • ④ タッチペン等を使用して署名させる方法
  • 非対面取引の場合
    • 電子署名がされたメールの送信を受ける方法
    • これらに準ずる措置として国家公安委員会規則で定める方法

古物商が相手方と対面して取引きする場合

① 身分証明書等の提示を受ける方法

(法第15条第1項第1号及び規則第15条第1項前段)

  • 相手方から「運転免許証」「国民健康保険被保険者証」「マイナンバーカード」等の提示を受け、住所、氏名、職業及び年齢を確認します

これは、ごく一般的な身分確認の方法ですが、運転免許証等に「職業」は記載されていないため別途確認する必要があります。

また、職業の確認は「会社員」や「自営業」等というだけでは不十分です。勤め先や屋号までしっかり確認するようにしましょう。

健康保険被保険者証の記号や番号、マイナンバーカードの個人番号を書き写したりコピーを取ることは法律で禁止されています

古物商の本人確認 - 保険証の番号等を控えてはダメ!4つの対処法

古物商が相手方の本人確認書類として健康保険証を利用する場合、その記載される記号・番号等にはマスキングを施すなどの措置が必要です。

② 相手方の家族等に問い合わせて確認する方法

(規則第15条第1項後段)

  • 相手方以外の者で、相手方の身元を確かめるに足りるもの(親兄弟、配偶者、勤務先等)に問い合わせて確認します

この方法は「相手方」と「相手方の身元を確かめるに足りるもの」との関係性の真偽を確かめることがが難しい場合もあります。

ですので、相手方が「この番号に電話して親に問い合わせてほしい」と求めたとしても、他の方法により確認することとして差し支えありません

③ 確認事項を記載・署名させた文書の交付を受ける方法

(法第15条第1項第2号及び規則第15条第2項)

  • 相手方に、住所、氏名、職業及び年齢の記載と署名させた買取申込書やお客様カード等を提出させ確認します

署名は、鉛筆などではなく、万年筆やボールペンのような改ざんできない筆記用具により明瞭に記載されたものでなければなりません。

また、その署名は、古物商やその従業員等の面前において署名したものでなければならず、あらかじめ署名してある文書の交付を受けたとしても確認したことにはなりません

住所等が真正なものでない疑いがある場合は、改めて①の方法により身分確認するようにしなければなりません。

④ タッチペン等を使用して署名させる方法

(規則第15条第3項第10号)

  • 相手方から住所、氏名、職業及び年齢の申出を受けるとともに、古物商やその従業員等の面前において、タッチペン等の器具を使用して電子タブレット等の画面に氏名を筆記させます

器具を使用して」ですので、「スタイラスペン」や「タッチペン」を使用する必要があり、タブレットの画面を指でなぞって書くことは認められません。

また、「筆記」ですので、マウスを使用して書くことや、キーボード、音声認識機能を利用して入力することは筆記には該当しません。

この確認方法は、筆記させた氏名が電子タブレット等の画面に明瞭に表示されるようにして行うものに限られます

住所等が真正なものでない疑いがある場合は、改めて①の方法により身分確認するようにしなければなりません。

古物商が相手方と対面しないで取引する場合

非対面取引における本人確認の方法につきましては、こちらの記事をご覧ください。

古物商 - 非対面取引における7つの本人確認の方法

インターネット等を利用して相手方と対面しないで行う取引について、法令で定められた相手方の確認方法を「確認に用いるもの別」に分類して行政書士が解説します。

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罰則 - 確認義務を怠ったら

第三十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
 第十四条第三項、第十五条第一項、第十八条第一項又は第十九条第三項若しくは第四項の規定に違反した者
(以下略)
第三十六条 第三十一条から第三十三条までの罪を犯した者には、情状により、各本条の懲役及び罰金を併科することができる。
第三十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人等が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第三十一条から第三十五条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

古物営業法

これらの確認義務を怠ると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金あるいはその両方に科される可能性があります。

さらに、第38条の「両罰規定」により、例えば、古物商を営む法人の従業員である管理者が違反行為をしたときは、行為者である管理者を罰するほか、その法人等も併せて罰せられる可能性があります。

古物商許可 - 管理者の役割と選任時の注意点

必ず選任することを求められる「管理者」とは、一体どのような役職なのでしょうか。職務や要件、制度について、行政書士が解説します。

Q&A

古物を売却するときも本人確認が必要ですか?

売却のみを行うのであれば、相手方の本人確認義務はありません。確認義務が課せられているのは、原則、古物を「買い受ける」「交換する」「売却の委託・交換の委託を受ける」ときです。

古物商がリサイクルショップで古物を仕入れる場合でも本人確認義務がありますか?

古物商同士の取引であっても、義務は免除とならないため、相手方(古物商であるリサイクルショップ)の確認をする必要があります。

「対価の総額」とは、具体的にどのようなことをいうのですか?

対価の総額とは、取引古物の個別の単価ではなく、一回の取引に持ち込まれた古物すべての総額をいいます。例えば、スマートフォンを6,000円、タブレット端末を8,000円で一度に買い取った場合、対価の総額は14,000円(1万円以上)となり、相手方の本人確認義務が発生します。

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