古物商の本人確認義務とは?対面取引における4つの確認方法

テーブルで向かい合う男女

はじめに

「本人確認って実際にはどうやるの?」

「100円で買い取る場合でも確認が必要なの?」

古物商は、古物の買取等を行うときは、その取引の相手方について、法に定められた方法により、法に定められた事項を確認しなければなりません。

これは、古物営業法の目的である「盗品等の市場への流入防止」のために課された義務で、古物商の防犯三大義務のひとつに数えられます。

この重要な本人確認義務について「どのような場合に」「どのような方法で」「何を確認しなければならないか」を行政書士が解説します。

古物商とは?許可が必要な7つの取引と不要な5つの取引

古物商とは、営利目的で中古品の売買を行う許可を公安委員会から受けた者をいいます。許可が必要なケースと不要なケースについて行政書士が解説。

本人確認が必要な場合

古物商は、次の取引を行う場合には、原則、相手方の本人確認をしなければならない義務が課せられています。

確認が必要な場合

  • 古物を買い受ける場合
  • 古物を交換(レンタル含む)する場合
  • 古物の売却又は交換の委託を受ける場合
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本人確認義務の例外

上記の取引を行うときであっても、次の場合については、本人確認の義務が免除されています。

確認義務が免除される場合

  • 対価の総額が1万円未満の取引きをする場合(国家公安委員会規則で定める古物を取引する場合を除く)
  • 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い戻す場合

対価の総額が1万円未満でも免除されない古物

特に当該確認又は文書の交付の必要があるものとして国家公安委員会規則で定められている次の古物については、対価の総額が1万円未満の取引であったとしても確認措置を取らなければなりません

1万円未満でも本人確認が必要な古物

  • 自動二輪車及び原動付自転車
    • (これらの部分品(ねじ、ボルト、ナット、コードその他の汎用性の部分品を除く)を含む)
  • 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物
    • 例:ゲームソフトなど
  • 光学的方法により音又は影像を記録した物
    • 例:CD、DVD、BDなど
  • 書籍
ゲームソフトとは

ゲームソフトとは、プレイステーションなどの家庭用ゲーム機やPC等で使用されもので、CD、DVD、カセット、カートリッジ等の形式は問いません。

光学的方法により音又は影像を記録した物とは

「透明な円盤に挟まれた被膜に孔の形で信号を書き込むことで音又は影像を記録し、これにレーザー光線を照射し、その反射によって信号を読み出す物」のことをいい、「磁気記録媒体や半導体ディスクに音楽や映画等を記録した物」であるカセットテープ、ビデオテープ、フロッピーディスク、MD、フラッシュメモリなどは含まれません

【まとめ】本人確認義務がある古物 - 早見表

対価の総額が一万円以上の場合は「すべての古物」、一万円未満の場合は「バイク」「ゲームソフト」「CD、DVD、BDなど」「書籍」の買取等を行うときは、相手方の本人確認が義務付けられます。

なお、古物の売却時は、本人確認は不要です。

対価の総額買取等
一万円以上すべての古物
一万円未満・自動二輪車及び原動付自転車(部分品を含む*1)
・ゲームソフト
・CD、DVD、BDなど
・書籍
*1 「ねじ」「ボルト」「ナット」「コード」その他汎用性の部分品を除く
古物とは?3つの定義と13のカテゴリー

古物商許可に係る「古物」は、一般に言う「中古品」とは異なります。法律上の古物の3つの定義と13の区分を解説します。

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確認事項

古物営業法は「窃盗その他の犯罪の防止」とともに「その被害の迅速な回復」を目的としており、相手方の氏名など4つの事項の確認が必要です。

確認しなければならない4つのこと

  • 住所
  • 氏名
  • 職業
  • 年齢
古物商にも適用される個人情報保護法のルールとは?事例付きで明快解説

古物商が台帳に記録する相手方の氏名等は、個人情報保護法が規定する「個人情報」です。遵守すべき個人情報保護法のルールを事例付きでわかりやすく解説。

相手方が18歳未満であった場合

本人確認をした結果、年齢が18歳未満であった場合、各都道府県の条例により古物の買受けや売却の委託について制限が設けられていますので注意が必要です。

条例では、次のときを除き、青少年(18歳未満の者)から古物を買い受けてはならないとされています。

  • 保護者の委託を受けているとき
  • 保護者が同行しているとき
  • 保護者の同意を得ているとき
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本人確認方法

確認方法は、古物商が自らの営業所等で相手方と対面して取引する場合と、インターネット等により相手方と対面しないで取引する場合とに分類されます。

確認方法

  • 対面取引の場合
    • ① 身分証明書等の提示を受ける方法
    • ② 相手方の家族等に問い合わせて確認する方法
    • ③ 確認事項を記載・署名させた文書の交付を受ける方法
    • ④ タッチペン等を使用して署名させる方法
  • 非対面取引の場合
    • 電子署名がされたメールの送信を受ける方法
    • これらに準ずる措置として国家公安委員会規則で定める方法

古物商が相手方と対面して取引きする場合

① 身分証明書等の提示を受ける方法

  • 相手方から「運転免許証」「国民健康保険被保険者証」「マイナンバーカード」等の提示を受け、住所、氏名、職業及び年齢を確認します

これは、ごく一般的な身分確認の方法ですが、運転免許証等に「職業」は記載されていないため別途確認する必要があります。

また、職業の確認は「会社員」や「自営業」等というだけでは不十分です。勤め先や屋号までしっかり確認するようにしましょう。

健康保険被保険者証の記号や番号、マイナンバーカードの個人番号を書き写したりコピーを取ることは法律で禁止されています

古物商の本人確認 - 保険証の番号等を控えてはダメ!4つの対処法

古物商が相手方の本人確認書類として健康保険証を利用する場合、その記載される記号・番号等にはマスキングを施すなどの措置が必要です。

② 相手方の家族等に問い合わせて確認する方法

  • 相手方以外の者で、相手方の身元を確かめるに足りるもの(親兄弟、配偶者、勤務先等)に問い合わせて確認します

この方法は「相手方」と「相手方の身元を確かめるに足りるもの」との関係性の真偽を確かめることがが難しい場合もあります。

したがって、相手方が「この番号に電話して親に問い合わせてほしい」と求めたとしても、他の方法により確認することとして差し支えありません

③ 確認事項を記載・署名させた文書の交付を受ける方法

  • 相手方に、住所、氏名、職業及び年齢の記載と署名させた買取申込書やお客様カード等を提出させ確認します

署名は、鉛筆などではなく、万年筆やボールペンのような改ざんできない筆記用具により明瞭に記載されたものでなければなりません。

また、その署名は、古物商やその従業員等の面前において署名したものでなければならず、あらかじめ署名してある文書の交付を受けたとしても確認したことにはなりません

住所等が真正なものでない疑いがある場合は、改めて①の方法により身分確認するようにしなければなりません。

④ タッチペン等を使用して署名させる方法

  • 相手方から住所、氏名、職業及び年齢の申出を受けるとともに、古物商やその従業員等の面前において、タッチペン等の器具を使用して電子タブレット等の画面に氏名を筆記させます

器具を使用して」ですので、「スタイラスペン」や「タッチペン」を使用する必要があり、タブレットの画面を指でなぞって書くことは認められません。

また、「筆記」ですので、マウスを使用して書くことや、キーボード、音声認識機能を利用して入力することは筆記には該当しません。

この確認方法は、筆記させた氏名が電子タブレット等の画面に明瞭に表示されるようにして行うものに限られます

住所等が真正なものでない疑いがある場合は、改めて①の方法により身分確認するようにしなければなりません。

古物商が相手方と対面しないで取引する場合

非対面取引における本人確認の方法につきましては、こちらの記事をご覧ください。

古物商 - 非対面取引における7つの本人確認の方法

インターネット等を利用して相手方と対面しないで行う取引について、法令で定められた相手方の確認方法を「確認に用いるもの別」に分類して行政書士が解説します。

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罰則 - 確認義務を怠ったら

これらの確認義務を怠ると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金あるいはその両方に科される可能性があります。

さらに、第38条の「両罰規定」により、例えば、古物商を営む法人の従業員が違反行為をしたときは、行為者である管理者を罰するほか、その法人等も併せて罰せられる可能性があります。

Q&A

古物を売却するときも本人確認が必要ですか?

売却のみを行うのであれば、相手方の本人確認義務はありません。確認義務が課せられているのは、原則、古物を「買い受ける」「交換する」「売却の委託・交換の委託を受ける」ときです。

古物商がリサイクルショップで古物を仕入れる場合でも本人確認義務がありますか?

古物商同士の取引であっても、義務は免除とならないため、相手方(古物商であるリサイクルショップ)の確認をする必要があります。

「対価の総額」とは、具体的にどのようなことをいうのですか?

対価の総額とは、取引古物の個別の単価ではなく、一回の取引に持ち込まれた古物すべての総額をいいます。例えば、スマートフォンを6,000円、タブレット端末を8,000円で一度に買い取った場合、対価の総額は14,000円(1万円以上)となり、相手方の本人確認義務が発生します。

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