古物商の不正品の申告義務 - 申告時期は?どうやって見分ける?
はじめに
「申告って110番?」
「申告しないとどうなる?」
古物商は、その取り扱う古物について、不正品の疑いがあると思われるときは、警察へ申告する義務があります。
古物商の許可を受けた以上、自らが古物営業法その他関係法令をよく理解し、取り扱う古物が不正品であるかどうかを判断するために必要な知識、技術又は経験を得るように努めなければなりません。
不正品の申告時期や申告先、見分け方のポイントなどについて行政書士が解説します。
目次
どんな場合に申告が必要か
(古物営業法(以下、「法」という。)第15条第3項)
古物商は、古物の「買取をする」「交換をする」「売却の委託又は交換の委託を受ける」場合において、不正品(盗品や偽造品など)の疑いがあるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければなりません。
申告が必要になる場合
- 古物を買い受ける場合
- 古物を交換する場合
- 古物の売却又は交換の委託を受ける場合
古物営業法は、その目的が「窃盗その他の犯罪の防止」及び「被害の迅速な回復」であることから、主に「買取」に着目しており、古物を顧客に売却するときは「本人確認義務」や「申告義務」は課せられていません
申告は「確信」ではなく「疑い」があるとき
申告の時期としては、不正品であるという「確信」までは必要なく「疑い」があるとみとめるときです。
少しでも「おかしい」と感じたら、買取等を中止し、直ちに通報しましょう。
盗品の処分先として利用されるようなことになった場合は、古物商自身にも被害が及ぶことになりかねません。
盗品と刑法
(盗品譲受け等)
刑法
第二百五十六条 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。
2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。
盗品であると認識しながら、その古物を買い取ってしまった場合、刑法の「盗品等有償譲受罪」に問われる可能性があります。
有罪となってしまった場合の刑罰は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金となります。
懲役「及び」罰金と規定されているので、懲役刑と罰金刑の両方が科せられることになります
少額の取引でも申告義務アリ
同じく防犯三大義務である「相手方の確認義務」「帳簿等の記載義務」では、1万円未満で特定の古物を取引する場合、その義務は免除されていますが、この申告義務では、たとえ 100円 での買取りだったとしても、不正品の疑いがあれば申告しなければなりません。
申告先はやっぱり110番?
緊急時であれば、ためらわず「110番」、そうでない場合は、その「営業所を管轄する警察署(盗犯捜査係)」に通報してしてください。
不審者、不製品の疑いがある場合、従業員同士であらかじめ合図などを決めておき、買い取りをする前に相手にわからない方法により通報するのが効果的です。
また、買取時には見逃してしまった場合でも、買取後に不正品の疑いを持ったときは、管轄の警察に申告し、その真偽を確かめる必要があります。
110番通報に漠然と抵抗を感じる方もおられるかと思いますが、不正品の申告義務は歴とした法で定められた義務ですので臆する必要はありません
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管理者の教育
(法第13条第3項及び古物営業法施行規則第14条)
古物商は、管理者に取り扱う古物が不正品であるかどうかを判断するために必要なものとして、特に「自動車」「自動二輪車又は原動付自転車」についての知識、技術又は経験を得させるように努めなければならないという努力義務が課せられています。
2021年における古物商等管理者講習は「自動車」についてのみ行われ、実施回数は34回、対象者は3,488人でした(令和3年中における古物営業・質屋の営業概況:警視庁)
必要な知識等
- 車体、車体番号打刻部分等における改造等の有無の判定
- 改造等がある場合にはその態様及び程度の判定
必要な知識等の程度
- 当該知識等を必要とする古物営業の業務に3年以上従事した者が有するもの
- 一般社団法人又は一般財団法人その他団体が行う講習の受講などにより得ることができるもの
不正品の見分け方「こんな人や物はアブナイ」
不正品かどうかは、その「物」からだけではなく、その「人」からも見極めることが重要です。
買取等の際には、次の点に気を付けてみるとよいでしょう。
人に対する着眼点
- 機器の操作や価格を知らない
- 落ち着きがなく、態度が不自然だ
- 会話内容があいまいだ
- 購入場所が答えられなかったり、商品知識があやふや
- 年齢、職業、性別、身なり等から不相応なものを持ってきた
- 男性が女物のブランド品などを持ち込んできた
- 同一人が頻繁にくる
- わざわざ遠方から売却に来た
- 身分確認資料の写真と本人がなにか違う
- 署名がぎこちない、不自然だ
- 複数人で来たのに一人だけ店内に入り、他の者は外で待機している
- 買取をせかす、とにかく早くその場から立ち去ろうとする
- そもそもが指名手配犯だ
物に対する着眼点
- 短期間のうちに同種のものを何度も持ってきた
- 一度に大量のものを持ってきた
- 新品や最新機種、未完成のものを持ってきた
- 製造番号やシリアルナンバーが消されたり、はがされたりしている
- ケースやコード、アダプターなど付属品のないものを持ってきた
- 物品に付されているネームと本人の名前が異なっている
- 高額商品であるのに保証書がない
- データが残ったままのパソコンやデジカメを持ってきた
- ネームタグが付いている
- 品触れにより手配されているものを持ってきた
「品触れ」とは、警察本部長等が古物商等に対し、盗品等の品名や特徴などを書面や電子メールにより発することをいい、品触れを受けた古物商等は、その品触れに相当する古物を所持していたとき又は受け取ったときには、その旨を直ちに警察官に届け出なければなりません(法第19条)
古物商による不正品申告件数
警視庁の発表によると、令和4年の不正品の総申告件数は 56件で、トップは「機械工具類:15件」、次いで「時計・宝飾品類:12件」「道具類:7件」と続きます。(下表カッコ内は、令和3年の件数)
リユース市場規模 2兆4,169円(2020年:環境省)からみると随分と少ない印象を受けます。
番号 | 古物の区分別 | 件数 |
---|---|---|
1 | 美術品類 | 0(0) |
2 | 衣類 | 3(7) |
3 | 時計・宝飾品類 | 12(18) |
4 | 自動車 | 2(3) |
5 | 自動二輪車及び原動付自転車 | 2(11) |
6 | 自転車類 | 4(59) |
7 | 写真機類 | 0(1) |
8 | 事務機器類 | 1(1) |
9 | 機械工具類 | 15(16) |
10 | 道具類 | 7(33) |
11 | 皮革・ゴム製品類 | 5(3) |
12 | 書籍 | 4(13) |
13 | 金券類 | 1(0) |
14 | その他 | 0(7) |
総数 | 56(172) |
罰則 - 申告を怠ると
不正品の申告義務を怠った場合について、古物営業法には、他の防犯三大義務のような「懲役刑」や「罰金刑」等の罰則は規定されていません。
ただし、義務違反の場合には「指示」や「営業停止命令」といった行政処分を受ける可能性があります。
「指示」とは、古物商等が法令等に違反した場合において、公安委員会が、その業務の適正な実施を確保するため必要な措置をとるべきことを求めて行われるもので、さらに、その指示にも違反した場合には、営業停止等を命ずることができます(法第23条及び第24条)
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