古物商 - 非対面取引における7つの本人確認の方法
はじめに
古物商は、下記表の通り、一定の古物の買取等を行う場合、取引の相手方の本人確認を行う義務があります。本人確認の方法は、営業所などで相手方と対面して行う方法と、インターネットやFAX、電話などを利用して相手方と対面せずに行う方法の2通りに分かれます。
今回は、その非対面取引について、法令で定められた相手方の確認方法を「確認に用いるもの別」に分類して行政書士が解説します。
対価の総額 | 買取等 |
---|---|
一万円以上 | ・すべての古物 |
一万円未満 | ・自動二輪車及び原動付自転車(部分品を含む*1) ・ゲームソフト ・CD、DVD、BDなど ・書籍 |
目次
用語解説
- 身分証明書等
- 「運転免許証」「国民健康保険の被保険者証」「マイナンバーカード」など
- 住民票の写し等
- 「住民票の写し」「住民票記載事項証明書」「戸籍謄本・抄本(住所の履歴(附票)があるもの)」「印鑑登録証明書」など
- 補完書類
- 6か月以内に発行された「公共料金又は社会保険料の領収書」「国税又は地方税の納税証明書」など
送付(又は送信)された「身分証明書等」「住民票の写し等」「補完書類」のコピー(又は画像)は、帳簿等又は電磁的方法による記録とともに保存しておかなければなりません
- 簡易書留等
- 引受け及び配達が記録される「簡易書留」「一般書留」「現金書留」など
- 到達確認の方法
- 送付した簡易書留等(本人限定受取郵便物による場合の到達確認も同様。以下同じ。)を古物と同封で返送させる方法
- 簡易書留等により受付票を送付し、その受付票を古物と同封して返送させる方法
- 簡易書留等に受付番号を記載して送付し、その受付番号を電話やメール等により連絡させる方法
- 簡易書留等で往復はがきを送付し、その返信部を送付させる方法
- 簡易書留等で梱包材を送付し、その梱包材で梱包して古物を送付させる方法
古物商が送付した梱包材と相手方から送付を受けた古物の梱包材との同一性が判断できるように、自社専用で第三者が入手できない梱包材の利用又は個別の番号を付しておくなどの措置が必要です
1. 印鑑登録証明書を用いる方法
印鑑登録証明書とその印鑑を押印した書面
(古物営業法施行規則(以下、「規則」という。)第15条第3項第1号)
相手方から印鑑登録証明書とその印鑑を押印した書面の送付を受けて本人確認を行います。
書面には制限がなく「買取申込書」「査定申込書」等のほか、印影以外に何も記載されていないものでも構いません。
6及び7の方法により相手方を確認する場合を除き、あわせて、相手方からその住所、氏名、職業、年齢の申出を受ける必要があります。申出を受ける方法は、特段制約はなく、電話やメール等任意のもので構いません。
2. 本人限定受取郵便を用いる方法
郵便物を受け取る際に本人確認書類(免許証や健康保険証など)を提示することで本人に限り受け取ることができる「本人限定受取郵便」を利用して、相手方が名宛人本人であることを確認します。
本人限定受取郵便とその到達確認
(規則第15条第3項第2号)
古物商から相手方に対して本人限定受取郵便物を送付し、相手方からの連絡等による方法により到達確認を行います。
例:取引の流れ
- 相手方:買取申込書とともに古物を送付
- 古物商:本人限定受取郵便で受付番号を記載した見積書を送付
- 相手方:受付番号をメールで連絡(到達確認)
- 古物商:口座振込み等により買取代金の支払い
本人限定受取郵便物で買取代金を送る契約
(規則第15条第3項第3号)
古物商と相手方の間で、古物の買取代金を「本人限定受取郵便にした現金書留など」で支払うことを約して取引を行います。
別の方法で代金を支払う場合には、改めて相手方の真意を確かめる必要があります。
「本人確認書類により本人を確認して渡す」ものであれば、郵便局が行う本人限定受取郵便のほか信書便事業者によるサービスでも可能です
3. 住民票の写し等を用いる方法
住民票の写し等・転送不要の簡易書留等とその到達確認
(規則第15条第3項第4号)
相手方から住民票の写し等の送付を受け、その記載された住所に「転送不要」として簡易書留等を送り、その到達を確認します。
例:取引の流れ
- 古物商:転送しない取扱いで簡易書留にて受付票を送付
- 相手方:古物をその受付票と住民票の写しとともに送付(到達確認)
- 古物商:口座振込み等により買取代金の支払い
住民票の写し等の送付と簡易書留等の送付については、どちらを先に行っても構いません
住民票の写し等と本人名義の口座への振込
(規則第15条第3項第6号)
相手方から住民票の写し等の送付を受け、その記載された氏名を名義人とする預貯金口座への振込み又は振替の方法により古物の買取代金を支払うことを約して取引を行います。
4. 身分証明書等を用いる方法
身分証明書等は、その原本や住民票の写し等に比べて偽造されやすいことから、転送不要の簡易書留等によって到達確認をすること又は複数の書類を組み合わせること、さらには、本人名義口座へ振り込むことによってその真正性を担保します。
コピーについては、コピー機によるもののほか、氏名等の記載内容が「明瞭に表示されたもの」であれば、FAXにより送信したものやデジタルカメラで撮影又はスキャナーで取り込んだデータであっても構いません。
また、そのデータファイルを印刷したものも含まれます。
身分証明書等のコピー・転送不要の簡易書留等とその到達確認・本人名義の口座への振込む契約
(規則第15条第3項第7号)
相手方から身分証明書等のコピーの送付を受け、その記載された住所宛に「転送不要」として簡易郵便等を送り、その到達を確認後、本人名義の口座への振込み又は振替の方法により古物の代金を支払うことを約し取引を行います。
例:取引の流れ
- 相手方:古物とともに運転免許証のコピーを送付
- 古物商:運転免許証に記載された住所に転送不要で受付番号を簡易書留にて送付
- 相手方:受付番号を古物商にメールで連絡(到達確認)
- 古物商:本人名義の口座に入金
宅配便の集荷サービスを利用することも可能
スマートフォン等で撮影した身分証明書等の画像を添付したメールの送信を受け、その住所、氏名に宛てて、宅配業者に集荷を依頼し、その住所、氏名の者から集荷が行われたことを確認した上で、その者の名義の口座に代金を振り込みます。
注意点
集荷サービスを利用する場合は、それが「転送不要の簡易書留を送付してその到達を確認する」と同様の内容であるものに限られ、具体的には次の3点を満たす必要があります。
- 古物商が宅配業者の集荷サービスを依頼すること(相手方が自分で集荷依頼をするのではない)
- 宅配業者が相手方の住所地に確実に赴いて集荷するものであること(相手方の要望があっても他の場所での集荷に応じない)
- 集荷の記録が宅配業者に残るものであり、住所地で集荷した事実が確認できるものであること
複数の身分証明書等のコピーと転送不要の簡易書留等の到達確認
(規則第15条第3項第5号)
- 相手方から異なる2種類の身分証明書等のコピーの送付を受け、記載された住所に「転送不要」で簡易書留等を送り、その到達を確認する
- 相手方から1種類の身分証明書等のコピー及び6か月以内に発行された補完書類の送付を受け、身分証明書等に記載された住所に「転送不要」で簡易書留等を送り、その到達を確認する
「2種類の身分証明書等」については、身分証明書等のコピーと住民票の写し等の計2種類でも構いません
ICチップ付き身分証明書等と転送不要の簡易書留等の到達確認
(規則第15条第3項第4号)
ICチップ付き身分証明書等に記録された住所・氏名・年齢又は生年月日等の情報の送信を受け、その住所に「転送不要」で簡易書留等を送り、その到達を確認します。
秘密鍵により暗号化されたICチップ情報の送信を受け、これを公開鍵により復号することで、真正なものであることを確認する必要があります
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5. ソフトウェアを用いる方法
画像やデータを加工できない仕組みのソフトウェアに提供し、それを用いて相手方が身分証明書等や容貌を撮影し、その提供を受けることにより相手方の確認を行います。
なお、画像には静止画だけでなく動画も含まれ、ビデオチャットにより相手方の身分証明書等を確認することも可能です。
券面画像・転送不要の簡易書留等とその到達確認
(規則第15条第3項第4号)
古物商が提供するソフトウェアにより、相手方に身分証明書等に記載された住所、氏名及び生年月日(又は年齢)とその厚み等の特徴を撮影した画像の送信を受け、その記載された住所に簡易書留等を「転送不要」として送り、その到達を確認します。
ソフトウェアは、古物商の委託先が開発したものや、第三者が開発したものでも構いません
顔画像・券面画像とICチップデータ
(規則第15条第3項第8号及び第9号)
- 古物商の提供するソフトウェアで相手方の容貌を撮影した画像及び写真付き身分証明書等に記載された住所、氏名及び生年月日(又は年齢)とその厚み等の特徴を撮影した画像の送信を受ける
- 古物商の提供するソフトウェアで相手方の容貌を撮影した画像及び写真付き身分証明書等のICチップに記録された住所、氏名及び生年月日(又は年齢)の情報の送信を受ける
ICチップには写真が含まれている必要があり、その写真と容貌を撮影した画像から同一人であることを確認します(目視、機械による照合かを問わない)
6. 電子署名や電子証明書を用いる方法
- 相手方から電子署名を行ったメールの送信を受ける(古物営業法第15条第1項第3号)
- 相手方から地方公共団体情報システム機構が発行した電子証明書(マイナンバーカードに記載されたもので個人番号の記載のないもの)と電子署名が行われた当該相手方の住所、氏名、職業及び年齢についての電磁的記録の提供を受ける(規則第15条第3項第11号)
古物商が公的個人認定法に規定する署名検証者である場合に限ります
- 相手方から公的個人認定法に規定する署名検証者が発行した電子証明書と電子署名が行われた当該相手方の住所、氏名、職業及び年齢についての電磁的記録の提供を受ける(規則第15条第3項第12号)
7. IDとパスワードを用いる方法(2度目以降の取引)
(規則第15条第3項第13号)
ホームページ上で取引を行う場合で、一度、上記1~6の方法により真偽の確認を取った相手方にID・パスワードを付与し、2回目以降、そのID・パスワードを使用し会員ページにログインすることで、その相手方の真偽を確認することができる場合には、改めて同様の措置をとる必要はないとするものです。
メールや申込書に古物商が付与したID(会員番号等)やパスワードを記載させるだけでは認められません
Q&A
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法人相手の取引の場合、何を確認すればいいですか
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法人と取引をする場合は、取引担当者の住民票の写し等により、その住所、氏名、年齢、職業を確認するとともに、法人の登記事項証明書及び法人の取引を担当している旨を記載した委任状の送付を受ける必要があります。
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簡易書留等の代わりに「特定記録郵便」を到達確認に利用することはできますか
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簡易書留等は、引受け及び配達が記録されますが、特定記録郵便は「引受け」は記録されますが「配達」は記録されないため到達確認に用いることはできません。
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メルカリで古物の仕入れをする場合も相手方の確認が必要ですか
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ヤフオクなどのオークションサイトやメルカリなどのフリマサイトを利用しての取引であっても、原則として、上記いずれかの方法により、相手方の確認をする必要があります。
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「転送不要」とするにはどのようにすればいいですか
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郵便物を転送不要とするには、その表面の見やすい場所に「転送不要」と表記すれば足ります。転送不要とすることにより、相手方(受取人)が、転居届を提出している場合でも、その郵便物は転送されることなく差出人に返還されるので、「相手方が送付先の住所に住んでいることの確認(到達確認)」の手段の一つとして用いることができるのです。(さらに厳密にしたものが「本人限定受取郵便」といえます)
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