行商とは?古物商許可は「行商する」で申請すべき理由

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はじめに

「行商ってなにができるの?」

「”行商しない” で申請するとどうなるの?」

一般的に行商とは「商品を持って家々をたずね歩き、小売すること(広辞苑)」とされていますが、古物商における「行商」とは、具体的にどのような営業形態をいうのでしょうか。

「行商する」として申請した場合のメリットや注意すべき点を行政書士が解説します。

古物商とは?許可が必要な7つの取引と不要な5つの取引

古物商とは、営利目的で中古品の売買を行う許可を公安委員会から受けた者をいいます。許可が必要なケースと不要なケースについて行政書士が解説。

行商と営業の制限

行商とは

「行商」の定義は、実は、古物営業法ではなく、警察本部長による例規通達により定められています。

その例規通達によれば、古物商における「行商」とは、「古物商が自らの営業所以外の場所で行う古物の取引」をいうとされています。

したがって、「行商する」として申請していない場合、古物の取引場所は「自らの営業所」に限られることになります。

古物市場で取引を行う」「お客の家に出向いて中古車の下取りをする」「デパートの催事場に出店する」場合などは、許可内容が「行商する」となっている必要があります。

POINT - 行商とは

定義:自らの営業所以外の場所で行う古物の取引

  • 古物市場での取引
  • お客の家に出向いての中古車の下取り
  • デパートの催事場への出店 など
古物商許可が必要な下取りと不要な下取りの条件について解説

査定が伴う下取りには古物商許可が必要です。一方、サービスとしての値引きにあたる場合は不要です。その違いと具体的な条件について行政書士が解説。

古物商以外の者からの買い受け

(営業の制限)
第十四条 古物商は、その営業所又は取引の相手方の住所若しくは居所以外の場所において、買い受け、若しくは交換するため、又は売却若しくは交換の委託を受けるため、古物商以外の者から古物を受け取つてはならない。(後略)

古物営業法

なお、「行商する」として申請していたとしても、古物商以外の一般の方(法人を含む)から古物を買い受ける場合は、古物営業法第14条の規定により、「自らの営業所」または「相手方の住所」に限られます。

ただし、仮設店舗営業(後述)の届出をしていれば、当該仮設店舗においても取引することができます。

  • 自らの営業所
  • 相手方の住所
  • 仮設店舗(要届出)
古物商同士の取引古物商以外の者との取引
行商しない自らの営業所自らの営業所
行商するどこでも
・古物市場 等
買い取りは…
1. 自らの営業所
2. 相手方の住所
3. 仮設店舗(要届出)

古物市場での取引

 古物市場においては、古物商間でなければ古物を売買し、交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けてはならない。

古物営業法第14条

古物市場(こぶついちば)とは、複数の古物商が集まり、古物商間における古物の円滑な取引のために利用される場所です。

簡単に言うと、魚市場や青果市場の古物版です。

古物市場に参加するには、古物商であることと、「行商する」として申請している必要があります。

仮設店舗での営業

(前略)ただし、仮設店舗において古物営業を営む場合において、あらかじめ、その日時及び場所を、その場所を管轄する公安委員会に届け出たときは、この限りでない。

古物営業法第14条第1項ただし書

「仮設店舗」とは、古物を買受け等をするために営業所以外の場所に仮に設けられた容易に移動することが可能な店舗(イベントブースや屋台など)のことです。

「仮設店舗での営業」とは、例えば、デパートの催事場に出店する場合などがあたります。

仮設店舗での営業を行うには、「行商する」の届出を行っていることの他に、あらかじめ警察署に届け出なければなりません。

POINT - 仮設店舗で営業するには

  • 仮設店舗営業 = 「行商する」 + 「仮設店舗営業届出」
仮設店舗とは?営業に必要な手続きや注意点を解説【記載例付】

仮設店舗とは、営業所以外の場所に一時的に設けられる店舗であり、催事場のイベントブースや駐車した車両、屋台など、容易に移動可能なものを指します。

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従業員も行商ができる

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「行商する」として申請をしておけば、古物商の従業員も行商を行うことができます

従業員が行商を行う場合、古物商の許可をもってすれば足り、警察署への申請や届出などは不要です。

行商従業者証の携帯・提示

(許可証等の携帯等)

第十一条 古物商は、行商をし、又は競り売りをするときは、許可証を携帯していなければならない。
 古物商は、その代理人、使用人その他の従業者(以下「代理人等」という。)に行商をさせるときは、当該代理人等に、国家公安委員会規則で定める様式の行商従業者証を携帯させなければならない。
 古物商又はその代理人等は、行商をする場合において、取引の相手方から許可証又は前項の行商従業者証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない。

古物営業法

古物商が行商を行う場合は「古物商許可証」、従業員が行う場合は「行商従業者証」を携帯し、相手方から求められたときは、これを提示しなければなりません。

古物商許可証は、古物商許可申請が申請許可となった場合に、申請場所の警察署において交付されます。

しかし、先にも述べた通り、従業員が行商を行うのに申請や届出は不要であるため、警察から「行商従業者証」が交付されることはありません

では、どうすればよいかというと、古物商自らが用意する必要があります。

許可証等の携帯・提示義務は、古物商が特殊な営業形態である行商を行う場合、固定した営業所における営業に比べて、法に定める相手方の確認や帳簿等への記載義務などの確実な履行が期待できないために設けられた規定です

「行商従業者証」の様式と作成

行商従業者証の様式
  • サイズ:縦5.5cm X 横8.5cm
  • 材質:プラスチック又はこれと同程度以上の耐久性を有するもの
  • 「氏名」「生年月日」:行商をする代理人等の「氏名」「生年月日」を記載
  • 「写真」:行商をする代理人の写真(縦2.5cm x 横2.0cm)

「行商従業者証」は、古物営業法施行規則別記様式第12号に規定されている通りに「自分で作成する」、または、「各都道府県の防犯協会」、もしくは、「その他業者」に依頼して用意することになります。

防犯協会は「行商従業者証 東京 防犯協会」、その他業者は「行商従業者証 作成」等と検索するといいでしょう。

費用に関しては、防犯協会の場合、各都道府県によりばらつきがあります。

その他の業者の場合、大体 1枚 2,200円~といったところでしょうか。

東京都古物商防犯協力会連合会では、1枚 1,540円(税込/2023年6月30日現在)で、東京都以外で古物商許可を取得した場合も注文可能です(確認済み)

罰則:許可証不携帯

第三十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
(中略)
 第八条第一項、第十一条第一項若しくは第二項又は第十二条の規定に違反した者
(後略)

古物営業法

たとえば、古物商許可証や行商従業者証を家や営業所に忘れまま行商を行ってしまった場合、10万円以下の罰金に処される可能性があります。

自動車の運転免許証が「運転するとき」の携帯を義務付けているのと同様に、携帯義務があるのは、あくまで「行商するとき」です。

「行商する」で申請すべき

このように、「行商しない」とした場合、取引場所は「自らの営業所」に限られるのに対し、「行商する」とした場合は、営業の幅がかなり広がることがわかりました。

しかし、「行商する」として申請しても、手数料19,000円は変わりませんし、審査が厳しくなるといったようなことはありません

「ヤフオク」や「メルカリ」などインターネットでしか取引する予定がないという方でも「行商する」として申請しておいて損はないでしょう。

許可取得後であれば、書換申請にて、以後「行商する」とすることができます

古物商の申請費用は個人と法人で変わる?公的書類の発行費用や節約のコツを紹介

「古物商許可が必要だけど、実際、いくらかかる?」許可申請に必要な費用や公的書類について、個人と法人での違いや節約のコツを詳しく解説します。

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「特定商取引法」が適用される場合

ここまで「行商する」として申請するメリットについて解説してきましたが、相手方の住所において古物を買い受けるとき特定商取引法」が適用される場合がありますので、いくつか注意すべき点を紹介します。

  1. 不招請勧誘の禁止
    • アポなしの飛び込み勧誘は禁止されています
    • 「査定」依頼に基づいて訪問した場合であっても、「買い取り行為」等「査定」を超えたの勧誘は禁止されています
  2. 勧誘目的の明示
    • 勧誘を行う前に、「事業者名」「勧誘する目的」「物品の種類」等を明示しなければなりません
  3. 再勧誘の禁止
    • 勧誘を行う前に、勧誘を受ける意思があるかを確認しなければなりません
    • 一度取引を断った消費者への再勧誘は禁止されています
  4. 書面交付義務
    • 「物品の種類」「購入価格」「クーリング・オフ」「引き渡しの拒絶」等に関する事項が記載された書面を交付しなければなりません
  5. 引き渡しの拒絶
    • 消費者はクーリング・オフ期間中(「4. の書面」の交付から8日以内)物品の引き渡しを拒むことができます
  6. クーリング・オフ
    • 「4.の書面」交付から8日以内であれば、売主たる消費者は無条件で契約の申込み撤回や契約の解除が可能です
  7. クーリング・オフ期間内に古物を第三者に引き渡す場合の通知
    • 購入業者が、クーリング・オフ期間中に第三者に物品を引き渡す場合、第三者にクーリング・オフの対象商品であることなど書面で通知しなければなりません
    • また、元々の売主である消費者に、第三者への引渡しに関する事項を通知しなくてはなりません

Q&A

従業員が中古車オークションに出品する場合は、行商従業者証が必要ですか

中古車オークションに出品する場合は、「営業所以外の場所で行う古物の取引」であり、行商にあたるので、行商従業者証が必要です。

古物商許可証や行商従業者証は、原本ではなくスマホで撮影したものを携帯・提示するのではいけませんか

古物営業法が規定する「許可証」「行商従業者証」は、その原本、つまり許可証等そのものを指しています。そのため、原本以外のコピーしたものを携帯して行商を行った場合は、古物営業法第11条違反となる可能性があります。

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