ドローン飛行許可が必要なケース:航空法その他関係法令から解説
近年、ドローンによる空撮や、LEDを搭載した複数のドローンを制御し夜空に精密な意匠を描くショー、人が立ち入るには危険な場所でのインフラ設備の点検など、趣味やビジネスを目的としたドローンの利用が急増しています。
一方、このような無人航空機が飛行することで、人が乗っている航空機の安全が損なわれることや、地上の建物・車両などに危害が及ぶことはあってはならないことはもちろんです。
このため、いつでもどこでも自由な飛行が認められているわけではなく、航空法その他関係法令によりドローンの飛行に関する基本的なルールが定められています。
航空法における9つの規制
航空法においては、飛行する「場所」と飛行の「方法」の2つの観点から、9つの基本的なルール(規制)が定められています。
次に紹介する「場所」または「方法」のどれか一つにでも該当する場合、国土交通大臣等による許可等が必要となります。
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 地表又は水面から150m以上の高さの空域
150m以上というのは「標高(海抜)」ではなく、「地表または水面」からになります。
したがって、高低差のある場所から飛行させるときは、水平に飛行させていても飛行禁止エリアに入ってしまうことがあるので注意が必要です。
(航空法(以下、「法」という)第132条第1項第1号)
(航空法施行規則(以下、「規則」という)第236条第1項4号)
標高:東京湾の平均海面を0mとし、そこから土地の高さを測ったもの
海抜:近隣の海面を0mとし、そこから土地の高さを測ったもの
2. 空港周辺の空域
航空機が安全に離着陸するために、空港の周辺には制限表面(空域)が設定されています。
実際にドローンを飛行させたいエリアが空港等の周辺空域に該当するか否かは、「国土地理院」の地図で調べることができます。
制限表面(緑のエリア)は、実際は外側水平表面や円錐表面、水平表面など細かく分かれており、エリアや空域によっては許可を必要としない場合もあります。
(法第132条第1項第1号)
(規則第236条第1項第1号~第3号)
空港等周辺及び150m以上の空域を飛行する際には、空港等設置管理者および空域を管轄する機関との調整が必要です。事前に調整を行い、管理者等の了解が得られてから申請を行いましょう。
3. 人口集中地区の上空
人口集中地区とは、国税調査において設定される統計上の地区で、「DID(Densely Inhabited District)」とも呼ばれています。
人口集中地区は、空港周辺の空域と同様に「国土地理院」の地図で調べることができます。
(法第132条第1項第2号)
(規則第236条の2)
たとえ、付近に誰もいない広大な私有地でドローンを飛行させる場合であっても、人口集中地区内であれば許可が必要になります。
4. 夜間での飛行
ドローンの位置や姿勢、周囲の障害物など状況確認が困難となり墜落のリスクも高くなるため、夜間飛行をするためには承認が必要です。
「夜間」とは、日の出から日の入りまでのことをいい、国立天文台が発表する時刻が基準となります。
このため、「日出」及び「日没」については、地域に応じて異なる時刻となります。
(法第132条の2第1項第5号)
5. 目視外での飛行
目視外飛行とは、操縦者が自分の目でドローンを直接見ないで飛行させることをいいます。
肉眼では確認できないほど遠くに飛ばしたり、双眼鏡を使って監視したり、別の人間に機体を監視させたとしても目視外飛行に当たります。
なお、コンタクトレンズやメガネによるものは「目視」に含まれます。
(法第132条の2第1項第6号)
FPV(First Person View)ゴーグルをかけての飛行は?
こちらもドローンを直接見ていないので目視外飛行に当たります。
FPV飛行を行いたいのであれば、承認申請が必要となります。
6. 人または物件から30m以上の距離を保てない状況での飛行
「人」とは
無人航空機を飛行させるものの関係者(例えば、イベントのエキストラ、競技大会の大会関係者等、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者を指します。
つまり、全く無関係の第三者ということになります。
「物件」とは
飛行させる者又は飛行させる者の関係者(例えば委託元等、法令で定める距離(30m)内に無人航空機が飛行することを了承している者)が管理する物件以外の物件を指します。
(法第132条の2第1項第7号)
(規則236条の6)
電柱、電線、信号機、街灯も物件に当たります。見落としやすいので、ドローンを飛行させる際には注意しましょう
7. イベント上空での飛行
航空法
(飛行の方法)
第百三十二条の二 無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。
(~略)
八 祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。
「多数の者の集合する催し」とは
特定の場所や日時に開催される多数の者の集まるものを指します。
催し場所上空においてドローンが落下することにより地上等の人に危害を及ぼすことを防止するという趣旨に照らし、集合する者の人数や規模だけでなく、特定の場所や日時に開催されるものかどうかによって総合的に判断されます。
該当する例
- 法律に明示されている祭礼
- 縁日、展示会
- プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会
- 屋外で開催されるコンサート
- 町内会の盆踊り大会
- デモ(示威行為)等
該当しない例
- 自然発生的なもの(信号待ちや混雑により生じる人混み等)
8. 危険物の輸送
航空機と同様、火薬類、高圧ガス、引火性液体、可燃性物質等をドローンで輸送するには承認が必要となります。
ただし、ドローン自体の飛行のために必要なバッテリーや燃料、安全装備としてのパラシュートを開傘するために必要な火薬類や高圧ガス、業務用機器(カメラ等)に用いられる電池は該当しません。
(法第132条の2第1項第9号)
(規則第236条の7)
9. 物件の投下
ドローンからの物件の投下は、地上の人や物への危険性と、物件投下後の重量の変化によりバランスを崩しコントロールを失う可能性があるので承認が必要です。
宅配や計測機器を設置する(置く)場合は、物件投下に該当しません。
(法第132条の2第1項第10号)
「個体」のみならず、水や農薬等の「液体」や「霧状」のものの散布も物件投下に該当します。
その他遵守事項
1. アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと
「アルコール」とは、ビールなどお酒はもちろん、アルコールを含む食べ物、チョコレートやケーキなども含みます。
具体的な基準値は定められていませんが、「体内にアルコールを保有する状態」でのドローンの飛行を禁止しています。
また、「薬物」とは、麻薬や覚せい剤等の規制薬物に限らず、医薬品も含まれるとされています。
(法第132条の2第1項第1号)
航空法
(無人航空機の飛行等に関する罪)
第百五十七条の四 第百三十二条の二第一項第一号の規定*に違反して、道路、公園、広場その他の公共の場所の上空において無人航空機を飛行させた者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
*第132条の2第1項第1号:飲酒操縦禁止規定
罰金刑のみならず懲役刑まで処される可能性のある重い規定となっています。
2. 飛行前確認を行うこと
機体に損傷や故障はないか、バッテリーの充電や燃料は十分か、飛行可能な気象状態(風速、雨量、気温など)であるかなど、安全な飛行ができる状態であるか確認します。
(法第132条の2第項第2号)
3. 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
飛行中に有人の航空機を確認し、衝突のおそれがあるときは、ドローンを地上に降下させてください。
また、飛行中の他のドローンを確認したときは、安全な間隔を確保して飛行させること、又は衝突のおそれがあるときは、ドローンを地上に降下させてください。
周囲の確認だけでなく、事前にFISS(飛行情報共有システム)を確認し、他のドローンをあらかじめ把握しておきましょう。当然、自らも登録しておくことで衝突予防につながります。
(法第132条の2第項第3号)
(規則第236条の5)
4. 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
不必要に騒音を発したり急降下させる行為は禁止されています。
また、「他人に迷惑を及ぼすような方法」とは、人に向かってドローンを急接近させることなどを指します。
(法第132条の2第1項第4号)
航空法の無人航空機に関する規定に違反すると…
50万円以下の罰金に処される可能性があります。
航空法
第百五十七条の五 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
(以下略)
小型無人機等飛行禁止法における規制
航空法による規制とは別に、「小型無人機等飛行禁止法」の改正により、重要施設及びその周囲おおむね300mの周辺地域の上空は、原則、飛行禁止となっています。
対象施設
- 国の重要な施設等
- 国会議事堂等
- 内閣総理大臣官邸等
- 危機管理行政機関
- 最高裁判所庁舎
- 皇居・御所
- 政党事務所
- 外国公使館
- 防衛関係施設(自衛隊施設、在日米軍施設)
- 空港
- 原子力事業所
これらの空域で飛行を行うには、飛行を行う48時間前までに、対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会に通報をする必要があります。
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