目視外飛行とは?補助者無し目視外飛行の条件

ドローンのFPVゴーグルをした男性

ドローンは、いつでもどこでも自由な飛行が認められているわけではなく、航空法その他関係法令によりドローンの飛行に関する基本的なルールが定められています。

今回は、「目視外での飛行」から「補助者無し目視外飛行」の要件について詳しく解説していきます。

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ドローンは目視により飛行させなければならない

ドローンの位置や姿勢を把握するとともに、その周辺に人や障害物等がないかどうかの確認が確実に行えることを確保するため、航空法では「目視により常時監視」を行いながら飛行させることとしています。

航空法

(飛行の方法)

第百三十二条の二 無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。

(~略)

 当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。

「目視により常時監視」とは

「飛行させる者」本人が自分の目で見ることを指し、「補助者による目視」は該当しません。

また、肉眼では確認できないほど遠くに飛ばしたり、モニター双眼鏡カメラ等を使用して見ることは、視野が限定されるため「目視」にはあたりません。

なお、眼鏡やコンタクトによるものは「目視」に含まれます。

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自分の目でドローンを監視していないため、「目視外飛行」になります。

FPV飛行を行いたいのであれば、承認申請を行いましょう。

目視外飛行における追加基準

目視外飛行を行う場合は、「許可等に係る基本的な基準」に加え、当該飛行に係る「追加基準」にも適合しなければなりません。

(以下概略)

機体について

  • 自動操縦システムを装備し、機体搭載カメラ等により機体の外の様子を監視できること
  • 地上において、ドローンの位置及び異常の有無を把握できること(不具合発生時に不時着した場合を含む)
  • 不具合発生時に危機回避機能(フェールセーフ機能)が正常に作動すること

操縦者について

  • モニターを見ながら、遠隔操作により、意図した経路を維持しながら飛行でき、安全に着陸できること
  • 必要な能力を有していない場合
    • 操縦者又はその関係者の管理下にあって第三者が立ち入らないよう措置された場所において、目視外飛行の訓練を実施すること

安全確保の体制

  • 飛行経路及びその周辺の障害物件等を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること
  • 原則)飛行経路全体を見渡せる位置に、安全な飛行のため必要な助言を行う補助者を配置すること
  • 例外)飛行経路の直下及びその周辺に第三者が存在している可能性が低いと認められる場合はこの限りでない
    • 活動中の火山の河口付近、陸地から離れた海上など
岩間から見える日差し

補助者を配置しないで目視外飛行を行うには

少なくとも現行の補助者の役割を「機体装備・地上設備等」で代替することが必要です。

現行の補助者の役割

  1. 第三者の立入管理
  2. 有人機等の監視
  3. 自機の監視
  4. 自機周辺の気象状況の監視

1. 第三者の立入管理

補助者の役割:飛行経路の直下及びその周辺を常に監視し、第三者が付近に近づいた場合は、注意喚起を行い、衝突を回避する

「機上装置・地上設備」により代替する場合

  • 常に進行方向の飛行経路下に第三者が立ち入る兆候を確認できるカメラ等を装備又は設置し、第三者が立ち入る可能性が判明した場合は即座に回避すること

「立入管理区画の設定」により代替する場合

  • 立入管理区画に看板等の物理的な目印を施し、第三者への注意喚起を行うとともに、問い合わせ先を明示した上でインターネットやポスターにより広く周知するなど対策を行うこと
  • 立入管理区画に道路鉄道家屋上空等、第三者が存在する可能性がある場所が含まれる場合には、追加の対策を講じること

追加対策の具体例

  • 道路が含まれる場合
    • 部分的にカメラ又は補助者を設置し、その場に応じて適切な対策(飛行中止、経路変更等)をとる
  • 鉄道が含まれる場合
    • 鉄道事業者との調整のうえ、鉄道が運行する時間帯には飛行させない
  • 家屋が含まれる場合
    • 住民等に事前に個別に説明し、了承を得るとともに、看板等において日時等を掲示した上で飛行させる
立入管理区域の範囲
  • 原則)ドローンが落下し得る範囲を考慮し、第三者の立入りを管理する立入管理区画を設定すること
    • メーカーが算出・保証した距離又は機体の性能・形状、運用方法(飛行高度、速度等)を踏まえて落下範囲が最大となる条件下で算出した距離とすること
  • 例外)メーカーにより適切に評価されたパラシュート等の第三者に危害を加えないことが保証された装置を使用する場合はこの限りでない

2. 有人機等の監視

補助者の役割:飛行経路周辺に有人機等がいないことを監視し、確認した場合には操縦者等に助言し、衝突を回避すること

「機上装置・地上設備」により代替する場合

  • 灯火(ライト)を装備又は機体を認識しやすい塗色を行うこと
  • 以下のいずれかを満たすこと
    1. 機体や地上に設置されたカメラ等により飛行経路全体の航空機の状況を常に監視し、有人機等を確認した場合は即座に着陸する等の安全措置を講じること(審査要領5-4(1)d)イ)
    2. 飛行前に、飛行経路周辺に関係する有人機の運航者に対して飛行予定の周知などの安全措置を講じること
      下記の事項をインターネット等により公表すること(審査要領5-4(3)キ)
      • 飛行経路図
      • 飛行日時
      • 飛行高度
      • 連絡先
      • その他飛行に関する情報
「有人機の運航者に対しての安全措置」について(クリックして表示)

3. 自機の監視

補助者の役割:機体の飛行状況(挙動、計画上の飛行経路とのずれ、不具合発生の有無等)を常に監視し、操縦者が継続的に安全運航を行うために必要な情報を適時助言すること

「機上装置・地上設備」により代替する場合

  • 地上において、機体の状態(位置、針路、姿勢、高度、速度等)を操縦者が遠隔で把握できること
  • 地上において、計画上の飛行経路と飛行中の機体の位置差を把握できること
  • 操縦者等は、機体の異常又は飛行経路から逸脱することが判明した場合には、計画上の飛行経路に戻す、適切な場所に着陸・着水させる等対策をとることができること

4. 自機周辺の気象状況の監視

補助者の役割:機体周辺の気象状況の変化を常に監視し、安全運航に必要な情報を適時助言すること

「機上装置・地上設備」により代替する場合

  • 飛行経路の直下若しくはその周辺、又は機体に風速センサー、カメラ等を設置し、気象状況を操縦者等が確認できること
  • 操縦者等は、メーカーの定める機体の運用限界を超える気象状態を把握した場合には、即座に適切な場所に着陸・着水させる等対策をとることができること

飛行させる場所

  • 原則)第三者が存在する可能性の低い場所であること
  • 例外)飛行経路を設定する上でやむを得ない場合であって、以下のような飛行に限り可能とする
    • 幹線道路・鉄道や都市部以外の交通量の少ない道路・鉄道を横切る飛行(道路や鉄道の管理者が主体的又は協力して飛行させる場合を除く)
    • 人口集中地区(DID)外の家屋上空であって離着陸時等の一時的な飛行
  • 飛行高度は通常有人機が飛行しない150m未満かつ制限表面未満であること

第三者が存在する可能性が低い場所は、山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地、ゴルフ場又はこれらに類するもの

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機体の信頼性の確保

  • 想定される運用により十分な飛行実績を有すること

不測の事態への適切な対応

  • 飛行中にモーター不具合等の不測の事態が発生した場合に備え、安全に着陸させる等の緊急時の実施手順を定めるとともに、着陸場所を予め選定すること
  • 飛行前に、飛行経路及びその周辺について、不測の事態が発生した際に適切に安全措置を講じることができる状態であることを現場確認すること

操縦者等の教育訓練

  • 遠隔からの異常状態の把握、状況に応じた適切な判断およびこれに基づく操作等に関し座学・実技による教育訓練を少なくとも10時間以上受けていること。

具体的な例

  • 飛行中に、カメラ等からの情報により、立入管理区画における第三者の有無等、異常状態を適切に評価できること
  • 把握した異常状態に対し、飛行地点や機体の状況を踏まえて最も安全な運航方法を迅速に判断できること
  • 判断した方法により遠隔から適切に操作できること

DIPS2.0によるオンライン申請が可能に

補助者置しないで目視外飛行を行う場合の承認申請は、従前は、紙の申請書を作成して郵送で行わなければなりませんでしたが、現在は、DIPS2.0よりオンラインでも行えるようになりました。

補助者を配置しない目視外飛行(レベル3飛行)を行う場合には、DIPS2.0によるオンライン申請、もしくは書面による申請書を作成いただき、飛行させる空域を管轄する地方航空局等へ提出してください。

補助者を配置しない目視外飛行(レベル3飛行)申請方法(PDF) - 航空局

飛行経路図には「立看板」「緊急着陸ポイント」等を図示

申請には、「離着陸ポイント」「立看板」「緊急着陸ポイント」「立入管理区画」等の詳細がわかるよう作図した飛行経路図が必要となります。

補助者無し目視外飛における飛行経路図作成例
出典:レベル3飛行申請書 作成例(航空局)

立入管理区画の設定の算定

立入管理区画の設定の算定において、飛行形態や想定される「飛行条件」(飛行高度、時速、風速など)、無人航空機の「落下距離」「位置誤差」を考慮して算出し、その数値を基に無人航空機の落下範囲と想定される最大値の数値を定める必要があります。

また、落下距離の算出時に用いた計算式(計算式上において高度、風速、時速なども明確に示すこと)、無人航空機の位置誤差などを示した資料など「根拠となるデータ」を明示しなければなりません。

参考

「農薬空中散布」における立入管理区画は、飛行の精度に由来する「位置誤差」と、物体としての危険性に由来する「落下距離」を合算して設定することになっています。

農薬空中散布における立入管理区域

立入管理区画の幅 = 位置誤差 + 落下距離

ドローンによる農薬の空中散布 - 補助者なしで行うには

立入管理区画の設定など、補助者無し空中散布の要件を解説します。