ドローンによる農薬の空中散布 - 補助者なしで行うには

農業用ドローンを操縦する男性

ドローンによる農薬の空中散布は、「無人航空機を飛行させる者」として航空法、さらに「農薬を使用する者」として農薬取締法等関連法令に基づいて実施する必要があります。

今回は、2022年4月1日に更新された、航空法における「航空局標準マニュアル(空中散布)(PDF)」から「補助者無しで空中散布を行うための要件」を中心に紹介します。

無人航空機による農薬の空中散布において必要な手続き

農薬の安全かつ適正な使用のために遵守すべき「空中散布ガイドライン」から必要な手続きを解説します。

空中散布には「操縦訓練」と「5回以上の実績」が必要

空中散布により機体重量が変化する状況下でも、下表に掲げる操作又は自動操縦が安定して行えるよう、また、飛行操作を行いながら散布を円滑に実施できるよう5回以上の空中散布の実績を積むため、訓練のために許可等を受けた場所又は屋内にて練習を行うこと。

項目内容
対面飛行対面飛行により、左右方向、前後方向の移動、水平面内での飛行を円滑に実施できるようにする。
飛行の組合操縦者から10m離れた地点で、水平飛行と上昇・下降を組み合わせて飛行を5回連続して安定して行うことができる。
8の字飛行8の字飛行を5回連続して安定して行うことができきる。

空中散布の訓練は、実際の農薬ではなく危険物に該当しない水などを散布して行います。

ドローンの飛行許可が「不要」なケース

ドローンの飛行には必ず許可が必要なわけではない。飛行場所や空域、飛行形態により不要になるケースを紹介。

「補助者」の配置と役割

  • 安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。
  • 飛行範囲及び散布範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
  • 飛行経路及び散布範囲全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況、散布状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。

「離発着場所」「飛行経路」及び「散布範囲」の選定

人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所及び周辺の第三者の立入りを制限できる範囲で飛行経路及び散布範囲を選定する。

飛行場所に第三者の立ち入りがあった場合は、直ちに散布及び飛行を中止する。

補助者を配置せずに空中散布を行うには…

飛行高度の制限

飛行高度は空中散布の対象物上4m以下とする。

「立入管理区画」の設定

飛行の精度に由来する「位置誤差」と、物体としての危険性に由来する「落下距離」を合算して、飛行範囲の外側に立入管理区画を設定する。

立入管理区画の幅 = 位置誤差 + 落下距離

位置誤差

自動操縦の場合

  • メーカーが位置誤差を保証する場合:メーカー保証値(数cm~)
  • メーカーが位置誤差を保証しない場合:10m

手動操縦の場合

  • 操縦者が目視で機体の位置を確実に把握できれば、位置誤差を考慮する必要なし

手動操縦の場合、目視で確実に機体の位置を把握できないときは、補助者なしで空中散布を行うことはできません。

落下距離

  • メーカーが落下距離を保証する場合:メーカー保証値
  • メーカーが落下距離を保証しない場合:下表により設定
飛行高度手動制御の場合の区域幅プログラム制御の場合の区域幅
5m137
3m126
2m115
1.5m115
1.0m115
0.5m115
制御不能に陥った際の機体の緊急回避機能別の落下距離(飛行速度:時速15km、風速:秒速3m以下)

例)自動操縦機(飛行高度2m、飛行速度:時速15km、風速:秒速3m以下の場合)

位置誤差:メーカーが保証(1m)

落下距離:メーカーが保証しない(上表より5m)

緊急回避:プログラム制御

→位置誤差 1m + 落下距離 5m = 立入管理区画の幅 6m

立入管理区画での注意喚起

立入管理区画では、人や車両が接近する可能性がある場合には、飛行場所の状況に応じた注意喚起を行う。

注意喚起措置の例

  • 看板等の設置
  • 空中散布の実施区域及びその周辺への事前周知の徹底
  • 空中散布の実施前、合間の見回り

立入管理区画の設定例

注意喚起の対応が不要な場合

①農地、山林、原野などが隣接する場合

飛行予定地が農地、山林、原野などが隣接する場合
出典:国土交通省
  • 立入管理区画:飛行予定農地の外側に設置。
  • 第三者へ対応は不要(隣接農地の管理者に事前通知)

注意喚起の対応が必要な場合

②第三者の立入りが予想される農道に隣接する場合

飛行予定地が第三者の立入りが予想される農道に隣接する場合
出典:国土交通省
  • 立入管理区画:農道を含む飛行予定農地の外側に設置。
  • 対応方法:上図のようにコーンを置くなど実施者の裁量

③第三者の立入りが制限できない公道に隣接する場合

飛行予定地が第三者の立入りが制限できない公道に隣接する場合
出典:国土交通省
  • 立入管理区画:飛行予定農地の内側に設置。
  • 対応方法:看板等による注意喚起。

補助者を配置せずに「夜間に」又は「目視外で」空中散布を行うには…

夜間飛行または目視外飛行を行う場合には、自動操縦による飛行のみを行い、ジオ・フェンス機能及びフェールセーフ機能が作動するよう設定して飛行させる。

補助者無しで夜間に目視外飛行は行うことはできません。
夜間飛行を行う場合は目視で、目視外飛行を行う場合は日中に行うことになります。

目視外飛行とは?補助者無し目視外飛行の条件

補助者無し目視外飛行を行うには、補助者の役割を「機体装備・地上設備等」で代替することが必要です。

Q&A

農薬の空中散布の前に取らなければならない手続は何か

航空法に関しては、少なくとも「危険物輸送」「物件投下」の飛行承認が必要です。農薬取締法等関連法令に関しては、「空中散布計画書」「農薬使用計画書」等の作成・提出が必要となります。

ドローンで空中散布を行うためには何か資格が必要か

特定団体の資格、免許、ライセンス等の取得義務はありません。

飛行許可・承認に必要なドローンの飛行経歴はどの程度あればよいか

原則、10時間以上の飛行経歴のほか、農薬の空中散布を行う場合は、さらに、5回以上の物件投下の実績が必要です。

農薬散布に利用できる機体に制限はあるか

農薬散布用として一般的に販売されている機体であれば利用できます。自動操縦機能を持ったドローンも同様です。

飛行マニュアルに基づかない農薬散布を行った場合、何か罰則があるか

飛行許可・承認の条件と異なる飛行を行ったとして、許可・承認の取り消し等の行政指導が行われることがあります。

ドローンで農薬の空中散布を行うには、特定の団体を通じて申請を行わなければならないか

特定の団体を通じて申請を行う必要はありません。個々人からの申請のほか、機体メーカーや販売代理店等による代行申請も可能です。

農薬の空中散布を行う際、補助者は必ず配置しなければならないか

原則、補助者を配置する必要がありますが、「立入管理区画」を設定するなど一定の条件を満たす安全体制を整えられれば、補助者を配置せずに行うことができます。

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