小型無人機等飛行禁止法:禁止区域を飛行させるために必要な手続きなど
令和2年6月24日に「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(以下、「小型無人機等飛行禁止法」という)が改正され、国会議事堂、原子力発電所など国の重要施設及び周辺地域の上空におけるドローンの飛行が禁止されることとなりました。
今回は、飛行が禁止されている対象施設周辺地域でドローンを飛行させるために必要な手続きを中心に解説します。
目次
対象となる施設
- 国の重要な施設等
- 国会議事堂等
- 内閣総理大臣官邸等
- 危機管理行政機関
- 最高裁判所庁舎
- 皇居・御所
- 政党事務所
- 外国公使館
- 防衛関係施設
- 自衛隊施設
- 在日米軍施設
- 空港(8空港)
- 原子力事業所
対象空港の飛行禁止区域図及び管轄警察署
- その他の対象施設や管轄警察署等についてこちらをご覧ください。
飛行禁止区域
- 対象施設の敷地・区域の上空(レッドゾーン)
- 周囲概ね300mの上空(イエローゾーン)
対象となる機体
- 小型無人機(小型無人航空機等飛行禁止法(以下「法」)第2条第3項)
- ラジコン飛行機等
- ドローン等
- 無人飛行船 等
- 特定航空用機器(小型無人機等飛行禁止法施行規則(以下「規則」)第2条関係)
- 操縦装置を有する気球
- ハンググライダー(原動機を有するものを含む)
- パラグライダー(原動機を有するものを含む) 等
対象施設の管理者等の「同意」がなければ飛行できない
航空法では、空港周辺や高度150m以上の空域などを飛行する場合には「許可」が必要ですが、小型無人機等飛行禁止法では、「対象施設の管理者等の同意」が必要となります。
以下の「飛行禁止の例外」にあたる3つのパターンを除き、原則飛行禁止です。
飛行禁止の例外(法第10条関係)
- 対象施設の管理者又は土地の所有者等が行う飛行
- 国又は地方公共団体(公務の場合に限る)が行う飛行
- ①②以外の者(対象施設の管理者又は土地の所有者から同意を得た者)が行う飛行
「土地の所有者若しくはその占有者」、「国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行」であっても、対象防衛関係施設及び対象空港の敷地又は区域の上空(レッドゾーン)では、対象施設の管理者の同意が必要になります。
航空法と小型無人機等飛行禁止法における規制のイメージ
航空法(飛行方法の規制)では、前提として無人航空機の飛行は認められており、例外で一部規制がかけられています。
それに対し、航空法(飛行場所の規制)及び小型無人機等飛行禁止法では、そもそもが飛行禁止として、例外で一部飛行が認められるという、より厳しいものとなっています。
飛行前に「通報」が必要
「通報」といえば、真っ先に思い浮かぶのは「警察」ですが、まさにこの場合も通報先は警察です。
飛行を行う48時間前までに、飛行を予定している対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して、都道府県公安委員会等へ通報する必要があります。(規則第3条関係)
通報書の提出
「通報」は、小型無人機等飛行禁止法施行規則で定められている所定様式の「通報書」を提出するか、オンラインでも行うことができます。(規則第3条関係)
オンラインで行う場合の注意点としては、受付が完了した旨の表示が出た場合でも、飛行開始前48時間を超過した後の通報や、記載事項に不備がある通報は無効となります。
すなわち、そのまま飛行させた場合、小型無人機等飛行禁止法違反となり処罰される可能性があります。
- オンライン通報
通報書の記載事項(規則第3条関係)
- 飛行日時
- 飛行目的
- 飛行に係る対象施設周辺地域内の区域(具体的に記載)
- 操縦者の氏名、生年月日、住所、及び電話番号
- 操縦者の勤務先名称、所在地及び電話番号(勤務先の業務として飛行を行う場合)
- 飛行に係る機器の種類及び特徴(製造者、名称、製造番号色、大きさ、積載物その他の特徴)
- 「機器の種類」は、「小型無人機」か「特定航空用機器」のいずれに該当するのか記載
- 飛行について同意をした施設管理者等の氏名、住所及び電話番号
添付書類
通報書には、「飛行区域を示す地図」と「施設管理者等の同意を証明する書面の写し」(同意書は施設管理者等以外の者が飛行を行う場合)を添付しなければなりません。(規則第3条関係)
国又は地方公共団体の委託を受けて飛行させる場合には、「委託を受けて小型無人機等の飛行を行うことを証明する書面の写し」を提出する必要があります。
実機又は写真の提示
また、警察署において飛行させる小型無人機等の実機を提示する必要があります。
ただし、それが困難な場合は、当該小型無人機等の写真を提出することで足りるとされています。(規則第5条)
写真は、形状や塗色が明瞭、かつ、「機器」全体を撮影したもので、カタログ等からの転載でない点に注意してください。
通報先が増えるケース
飛行場所が「皇居」及び「赤坂御用地」の場合
飛行場所が「皇居」及び「赤坂御用地」である場合は、上記通報に加えて、対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して皇宮警察本部長に通報する必要があります。(法第10条第3項第1号)
対象施設周辺地域が「海域」を含む場合
「海域」を含む対象施設周辺地域で飛行させる場合は、上記通報に加えて、管区海上保安本部長への通報が必要となります。(法第10条第3項第2号)
飛行場所が「防衛関係施設」及び「空港」の場合
飛行場所が「対象防衛関係施設」及び「対象空港」である場合は、上記通報に加えて、当該施設管理者への通報が必要となります。(法第10条第3項第3号及び第4号)
管轄警察署が2つ以上ある場合
対象施設周辺地域が同一の都道府県内である場合 | いずれかの警察署に通報(規則第3条括弧書) |
対象施設周辺地域が2つ以上の都道府県にまたがる場合 | すべての都道府県公安委員会に通報 |
例)東京国際空港周辺で飛行する場合の通報先
- 羽田空港の所在地は「東京都」ですが、小型無人機等飛行禁止法で定められている「周囲概ね300m」(ブルーのライン)の一部が神奈川県にまたがっています
- したがって、通報先は警視庁(東京湾岸警察署、東京空港警察署、大森警察署又は鎌田警察署のいずれか)と神奈川県警(川崎臨港警察署)の二か所に
- また、対象施設周辺地域に「海域」が含まれているため、第三管区海上保安本部長へ
- さらに、「空港」での飛行になるので、東京国際空港の施設管理者へ
- 以上、このように計四か所への通報が必要になります
警察官等による退去命令等
警察官等は、違反飛行が行われていると認められる場合には、対象施設周辺地域の上空から退去させることその他必要な措置を命じることができます。(法第11条第1項)
また、警察官の命令に従わないなど一定の場合には、飛行の妨害、飛行に係る機器の破損その他必要な措置をとることができます。(法第11条第2項)
罰則:小型無人機等飛行禁止法に違反したら…
禁止区域で飛行させた者又は警察官の命令等に従わない者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。
小型無人機等飛行禁止法
(罰則)
第十三条 第十条第一項の規定に違反して対象施設及びその指定敷地等の上空で小型無人機等の飛行を行った者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 第十一条第一項(同条第三項及び第五項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
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