空港周辺の飛行禁止空域:許可を必要としない高度の調べ方などを解説

空港の様子

ドローンは、いつでもどこでも自由に飛行させてよいわけではなく、航空法その他関係法令によりドローンの飛行に関する基本的なルールが定められています。

今回は、「空港周辺の空域」について詳しく解説していきます。

空港周辺の空域とは

航空機が安全に離着陸するために、空港の周辺には制限表面(空域)が設定されています。

実際にドローンを飛行させたいエリアが「空港周辺の空域」に該当するか否かは、「国土地理院」の地図で調べることができます。

国土地理院サイト画面

緑色の面は、上空での飛行が禁止される制限表面を表します。

中心部の紫色の面は、上空及びその下の空域での飛行が禁止される進入表面及び転移表面並びに上空の空域で飛行が禁止される空港等の敷地を表します。

国土地理院地図での「空港等の周辺空域」の表示方法

  1. 左上の「地図」ボタンをクリック
  2. 開いたパネルの「その他」
  3. 「空港等の周辺空域(航空局)」
国土地理院地図の空港等周辺空域の表示方法
出典:国土地理院

制限表面とは

空港周辺には、航空機が安全に離着陸するために、一定の空域を障害物がない状態にしておく必要があります。

そのため、航空法に基づき制限表面(進入表面、転移表面、水平表面、延長進入表面、円錐表面、外側水平表面)が設定されており、この制限表面の高さを超えて、物件等を留置することは禁止されています。

物件等とは、建物・アンテナ・工事用クレーンなど一時的に設置される物件や看板、植物、あるいは上空に浮揚するアドバルーンやドローンラジコン飛行機等も該当します。

制限表面概略図

制限表面の概略図
出典:成田空港株式会社

平面概略図

制限表面の平面概略図
出典:成田空港株式会社

断面概略図

制限表面の断面概略図
出典:成田空港株式会社

1号告示空域

航空機の離陸及び着陸が頻繁に実施される空港等で安全かつ円滑な航空交通の確保を図る必要があるものとして国土交通大臣が告示で定める空域があります。

対象となるのは、以下の8つの空港です。

1号告示空域:対象空港

  • 新千歳空港
  • 成田国際空港
  • 東京国際空港
  • 中部国際空港
  • 大阪国際空港
  • 関西国際空港
  • 福岡空港
  • 那覇空港

進入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域は飛行禁止となります。

1号告示空域 断面図A
出典:国土交通省
1号告示空域 断面図B
出典:国土交通省

その他空港やヘリポート等

進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域は飛行禁止です。

その他空港やヘリポート等の飛行禁止空域A
出典:国土交通省
その他空港やヘリポート等の飛行禁止空域B
出典:国土交通省

制限表面の高さは「標高」ではない

このように空港周辺の空域のすべてが飛行禁止というわけではなく、例えば「外側水平表面」エリアでは150m未満であればドローンを飛行させるのに許可を必要としません。

ただ、一つ注意したい点は、この「45m」「150m」という数字は、標高ではなく各空港に設定されている「標点」を起点にした高さということです。

飛行予定場所での「地表からの高さ」を割り出したい場合は、飛行予定場所と空港に設定された標点との標高差を考慮しなければなりません。

ちなみに、羽田空港の標点は標高約6m、伊丹空港は海抜12mの位置に設定されているそうです。

空港周辺空域の高度制限の調べ方

羽田空港近くの「萩中公園(東京都大田区萩中3丁目26−46)」でドローンを飛行させると仮定して、高度制限の調べ方を解説します。手順としては以下の通り3ステップとなります。

高度制限の調べ方

  1. 飛行場所の制限高(標高)を調べる
  2. 飛行場所の標高を調べる
  3. 制限高から飛行場所の標高を引く

1. 飛行場所の制限高(標高)を調べる

大きな空港には「高さ制限回答システム」が用意されていて、ネット上で制限高度を調べることができます。

ドローンの飛行に関してのみならず、建築できる建物等の高さの確認にも使われています。

  • 住所等で検索するとマップ上に赤いピンが立つので、その近くをクリックします。
羽田空港の高さ制限回答システム画面
羽田空港高さ制限回答システム

制限高(標高):約51m

2. 飛行場所の標高を調べる

国土地理院」の地図を使います。こちらも住所等で検索し、表示されたマップの任意の場所(今回の場合、薮中公園敷地内)を右クリックします。

  • マップ下部に標高が表示されます。
国土地理院のサイトで標高を調べる

標高:1.6m

標高が表示されていない場合

国土地理院地図の標高の表示方法

3. 制限高から飛行場所の標高を引く

ドローン飛行可能高(地表からの高さ)=飛行場所の制限高(標高)ー 飛行場所の標高

数字を当てはめると、51m-1.6m=49.4mとなります。

「萩中公園(東京都大田区萩中3丁目26−46)」では、空港周辺での飛行許可を受けずに地表から49.4m未満の高さまでドローンを飛ばすことができます。

萩中公園は人口集中地区なので、当該地区での飛行許可も必要となります。

空港周辺でドローンを飛行させる際の事前調整

「空港等の周辺」に該当する場合であって、制限高さを超えて飛行させる場合、又は制限高さが地上等から150m以上の場合であっても地上等から150m以上の高さを飛行させる場合には、空港等の管理者の了解を得てから国土交通大臣に対する許可申請を行う必要があります。

空港等の管理者から了解を得ただけでは、国土交通大臣の許可を得たことにはなりません。

成田国際空港で「許可」が下りたのは「0件」(2022年5月24日時点)

成田国際空港の管理者である「成田国際空港株式会社(空港運用部門 オペレーションセンター)」に事前調整について問い合わせてみたところ、「空港周辺での飛行について申請は来ているが、今まで許可が下りたことはない。」とのことでした。

大きな空港では難しいのかもしれません。

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小型無人機等飛行禁止法よる規制

令和2年6月24日に「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」が改正され、国会議事堂、原子力発電所など国の重要施設及び周辺地域の上空におけるドローンの飛行が禁止されることとなりました。

空港に関しては、上記8つの空港の周辺地域(空港の敷地・区域やその周辺概ね300mの地域)の上空において、重さや大きさにかかわらず、飛行禁止となります。

羽田空港の敷地・区域やその周辺概ね300Mの地域
羽田空港の敷地・区域やその周辺概ね300mの地域(出典:国土交通省)

例えば、下図の「羽田旭町」は、水平表面エリアですが「周辺地域」に含まれるため高さ45m未満でも飛行禁止となります。

羽田旭町の地図

飛行が禁止されている空港の敷地・区域やその周辺概ね300mの地域(PDF)

指定された空港周辺地域の上空でドローンを飛行させる場合は、空港管理者の同意や都道府県公安委員会等への事前通報が必要となります。

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追加基準

空港周辺の空域で飛行を行う場合は、「許可等に係る基本的な基準」に加え、当該飛行に係る「追加基準」にも適合しなければなりません。

また、飛行形態により複数の事項に係る許可等を要する場合には、原則それらの事項に係るすべての追加基準に適合することとされています。

機体について

  • 灯火(ライト)又は認識しやすい塗色を行うこと。

安全確保

  • 空港等の運用時間外又は離発着航空機がいない時間帯の飛行であること。このため、空港設置管理者との調整を図り、了解を得ること。
  • 空港設置管理者と常に連絡がとれる体制を確保すること。
  • 原則、飛行経路全体を見渡せる位置に、安全な飛行のため必要な助言を行う補助者を配置すること。
  • 原則、飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。

その他

原則、飛行を行う前日までに、その飛行内容について飛行する場所を管轄する空港事務所長等へ、以下の項目を通知すること。

  • 飛行日時:飛行の開始日時及び終了日時
  • 飛行経路:緯度経度(世界測地系)及び所在地
  • 飛行高度:下限及び上限の海抜高度
  • 機体数:同時に飛行させる無人航空機の最大総数
  • 機体諸元:無人航空機の種類、重量等

1号告示空域(進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空に限る。)であって、飛行を行う空域が人口集中地区の上空に該当する場合、上記基準に加え、以下に掲げる基準も適合すること。

原則、人又は家屋の密集している地域上空であっても、第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件とし、この場合において、次に掲げる基準に適合すること。

  • 機体について、プロペラガード、衝突した際の衝撃を緩和する素材の使用又はカバーを装着すること。
  • 飛行させる者について、意図した飛行経路を維持できること。
  • 第三者の上空で無人航空機を飛行させないように、次に掲げる基準に適合すること。
    • 飛行経路全体を見渡せる位置に、安全な飛行のため必要な助言を行う補助者を配置すること。
    • 飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと